Episode.151 悪魔 ページ1
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「あっぶな…！ あぶな！ 殺す気ですか！？」
そう声を掛けるも、兵長は何も言わなかった。
壁にアンカーを指して、ただ…全力で私の身体に腕を回していた。
その力が、兵長の気持ちを物語っていて…私は、ただそれに従う他なかった。
今、兵長を離したら、物理的な私の命と、精神的な兵長の命が途絶える気がして…私は力いっぱい兵長を抱きしめた。
「へ、いちょ…う」
「うるさい」
「す、みません…」
「少し…黙ってろ」
そういった、兵長の声は震えていた。
そりゃあ、そうだよね…あれは、私だってそういう覚悟だった。
普通に、死ぬ気だった。
また…生かされてしまったな。
なんとなくだけど、兵長は…それだけじゃないような気がして…他にも色々あったような、そんな気がした。
だって、私が戻ってきただけなら、生きてんじゃねぇかとか、信じてたとかそういうことを言いそうな気がする。
とか言うとまた、くさいとか言われるんだろうけど…
なんというか、兵長をこんなにしてしまったのは…まあ、団長のこともあるし、そうなんだろうけど…
とりあえず兵長の背中を優しくさすり、兵長の回復を待つ。
すると、兵長はポツポツと口を開き…
獣の巨人を逃したこと。
アルミンと団長を選ばなければならなかったこと。
団長のことは選べなかったこと。
それをひとつひとつ、零すように話してくれた。
そして、私を見送ったときの気持ちと、失った時の気持ちも…全部
本当にこの人はどこまでも優しくて、正直者で…素直で…
辛かっただろうに…きっと、弱音を吐く相手すらいなくて…その選択も…1人でするにはきっと重すぎた。
でも…
「私も、これ以上団長が悪魔になっていく姿は…見たくないですね」
「……ああ、そうだな」
その後、しばらくしてから頭上からハンジさんの声が聞こえ、兵長もようやく我に返り、私を抱きかかえたまま壁の上へ戻った。
兵長は少し風に当たってくるとか言ってその場を後にしてしまった。
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作者名：妄想侍 | 作成日時：2023年10月5日 16時
