ありがとう ページ43
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「Aちゃん!」
『…青宗くん』
階段を降りて、すぐに青宗くんが立っていた。
「…もう、大丈夫そうだな」
『…っうん、ありがとう』
それから、周囲を見渡せば救急車や警察、野次馬もまあまあの数がいて私はギョッとした。
もうどうすることもできなかったから「すみません」と万次郎も一緒に平謝りしてくれて警察の方には「何事もなくて良かったです」と笑顔で返され、ついでに「お悩み相談所」のパンフレットを渡された。
野次馬の方々には「よかったぁ」「ネェちゃんまだわけーんだから死ぬな!」「え、黒髪の人かっこよくね」とかなんとか声をかけられ、平和な空気が流れた。
2人で思わずクスッと笑い、その場はなんとか凌げた。その後、青宗くんの車でもう一度式場へ向かった。
鼻は赤かったけれど目はあまり腫れることはなく、少し崩れたメイクを直して、その間万次郎はずっと横目で私を見ていて恥ずかしくなった。
『万次郎、あんまり見ないで…』
「なんで?」
まるで、昔に戻った様な会話をしてまた胸が熱くなる。
『アイラインずれちゃう』
「俺がやってあげる」
『絶対イヤ』
何分か前までは死にたくてたまらなかったのに。何時間か前までは冷たい声で突き放していたのに。
あの時、万次郎も含めて彼らが引き止めていなかったらどうなっていたのだろうと冷静に考えてみるとゾッとした。
「…何考えてんの?」
『…万次郎、ありがとうって考えてるの』
「考えてるんじゃなくて俺にちゃんと言ってよ」
『ありがとう』
前よりも、もう少し低くなった声。
でも、口調はあの時のままで。
まだ、「万次郎はなくなってない」って思った。
「(俺空気)」
.
式場に戻ったが、式もブーケトスも終わってしまっていて、ちょうど皆がご飯を楽しんでいる時だった。
『ごめんね、2人とも…』
多分、この騒ぎを知っているのはこの私含めて3人だけ。
「お前もう謝んの禁止」
そう万次郎が言えば、賛同するように頷く青宗くん。
『…うん、ありがとう』
「それでいい」
そして、扉から静かに入り、青宗くんは「俺、あっちだから」と別れてしまった。
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水原カノ(プロフ) - くろしばさん» 嬉しい限りです( ; ; )拙い文章ですが、番外編でもよろしくお願いします…!(*´꒳`*) (2022年2月9日 23時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
水原カノ(プロフ) - みきさん» そう言っていただけて嬉しいです…!まだ続きますがよろしくお願いします(*´-`) (2022年2月9日 23時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - いつも楽しくワクドキ泣きもしながら読ませていただきました!番外編楽しみにしています!応援してます!頑張ってください! (2022年1月22日 22時) (レス) @page50 id: ba268ba5be (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 番外編楽しみにしてます!この作品めちゃ面白かったです!頑張ってください! (2022年1月22日 16時) (レス) @page50 id: 23779c598a (このIDを非表示/違反報告)
水原カノ(プロフ) - 茶子さん» 素敵なコメントありがとうございます(;_;) ティッシュの供給は間に合っていますでしょうか…?いつでもプレゼントします!(*´ω`*) (2022年1月15日 22時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水原カノ | 作成日時:2021年12月23日 17時