動こうとしている ページ16
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ーside ドラケンー
「マイキー、いいのかよ」
「いいんだよ、ケンチン」
それから数日後。
朝、佐野家を訪ねればモグモグといつものようにたい焼きを食べるマイキー。それを横目で見るエマ。エマの隣には興味がなさそうな顔をするイザナ。
エマには一通り電話で話し、さぞかし驚いていた。
「…アイツが何考えてんのか全然わかんなかった。何もかも諦めた、そんな感じの顔してた」
「まるで誰かさんみたいだね」
ボソッとエマが呟く。
イヌピー曰く、Aは倒れる前に誰かと揉めていたと周辺の人が言っていたらしい。
黒髪にセンターパート、サンダルを履いた小柄の男性、それだけ聞いて俺もイヌピーも誰かわかった。
しかもその時、マイキーは六本木付近で出張営業をしていたとも知っていたから犯人はコイツしかいなかった。
「…相変わらず、泣き虫だったけどな」
マイキーの言葉は俺にもエマにも聞こえていた。
「…だな」
幸せになれなかったのは、マイキーとAだけだった。
取り残された、そんな感じ。
「随分女々しいな、万次郎。会いたきゃ会えばいいんだよ」
「俺もイザナに賛成。マイキーはもう一度会うべきだと思うぜ」
「会わない」
「マイキー、私も会うべきだと思う。今のちーをわかってあげられるのはマイキーだけだよ」
けれど、俺は思う。2人はまだやり直せる。
そのきっかけが無いだけだ。今、12年越しにようやく動こうとしてる。
「もう、マイキー聞いてる?」
「…話は終わりか?」
ゾクッと震えた。
たまに来る、マイキーの静かな圧。
「俺がアイツのそばにいたら、不幸になる。お前らが一番わかってるだろ」
イザナはともかく、エマと俺は確かに痛いほどわかる。
「俺はもう二度と、アイツに会いたくない。アイツにもそう言った」
「は!?マイキー、Aにンなこと言ったのかよ!?」
「マイキー…。さすがにそれは酷いよ」
マイキーも、何を考えているのか分からなかった。
もはやイラつきが湧き上がって「店あるし、帰る」と言って立ち上がる。
「ケンちゃん…」
「…言おうか迷ったけどよ」
これは、最後の情だ。
「Aの両親、死んじまったらしい」
エマの絶望的な目。横目でも、マイキーの肩が一瞬動いたのを見逃さなかった。
「アイツには、もう本当にマイキーしかいねぇんだよ」
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水原カノ(プロフ) - くろしばさん» 嬉しい限りです( ; ; )拙い文章ですが、番外編でもよろしくお願いします…!(*´꒳`*) (2022年2月9日 23時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
水原カノ(プロフ) - みきさん» そう言っていただけて嬉しいです…!まだ続きますがよろしくお願いします(*´-`) (2022年2月9日 23時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - いつも楽しくワクドキ泣きもしながら読ませていただきました!番外編楽しみにしています!応援してます!頑張ってください! (2022年1月22日 22時) (レス) @page50 id: ba268ba5be (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 番外編楽しみにしてます!この作品めちゃ面白かったです!頑張ってください! (2022年1月22日 16時) (レス) @page50 id: 23779c598a (このIDを非表示/違反報告)
水原カノ(プロフ) - 茶子さん» 素敵なコメントありがとうございます(;_;) ティッシュの供給は間に合っていますでしょうか…?いつでもプレゼントします!(*´ω`*) (2022年1月15日 22時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水原カノ | 作成日時:2021年12月23日 17時