わたしのできること 2 ページ37
｢ごめん｣
毛布だけかぶって、ベッドの上に散ってるパジャマを集めていたら、うしろから声をかけられた。
｢あやまることないよ？｣
｢でもなんか……八つ当たりみたいな｣
放っておかれるより全然マシだよ？
とは声に出さなかった。
｢わたしでも役に立った？｣
｢わるかった｣
手をのばして、そっとわたしの頬にふれる。やさしい指先。さっきとは別人みたいな。
｢ごめん｣
そう言って、わたしの手をとってきゅっと握る。
｢Aのやさしさにつけこんだ｣
｢つけこんでよ｣
そう言って、手をつないだままその手を自分の頬にすりすりする。
｢わたしは貴のためにいるんだからね｣
貴久はちょっとびっくりしたような顔をして、それからちょっと微笑むと、また｢ごめん｣と言った。
｢だからあやまらなくてもね｣
｢いや、あした遅くなっちゃうかもしれないから、のごめん｣
そう言って、今度は静かに、やさしいキスをしてくれた。
とってもやさしくて、まるで貴久の心みたいにまるくなれるキス。
｢たすかった、し、Aがもっと好きになる。あんな乱暴にしたのに可愛くて、やさしくて、Aにまるごと包まれたみたいだった……｣
ボソボソとそんなことを言うから。
真っ赤になりつつ｢そんな話しなくていいよ｣と抵抗する。
｢聞いてよ｣
｢恥ずかしいよ｣
｢俺も言ってて恥ずかしいけど、でも｣
今度はやさしくするから、ねるのおそくなるね、って、貴久はさっきより少しやわらかくなった顔で、わらった。
Only You……S.K.→←わたしのできること……T.M.
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作者名：由乃 | 作成日時：2020年10月27日 11時
