自己嫌悪 Sho ページ6
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スマホを耳に当てたまま、目を見開くAに
俺は無表情のまま続けた。
『俺は仕事してるんだけど。』
「あ……」
『もう少し静かに電話してくれない？』
「…ごめん、ね…」
チラっと見えた彼女の表情が、申し訳なさそうな色に染まっていくのを見て
俺は、くるりと体の向きを変えて寝室をあとにした。
リビングに戻り、またパソコンの画面に向かえば、さっきまでの苛立ちは消えたけど
自分が、どうしてあんな行動をとったのかと、今さらながら後悔した。
『…はぁ……』
肺の底から淀んだ空気を吐き出し、額を押さえると…
気のせいか、頭まで痛くなってきた。
あんな言い方したかったわけじゃないのに……
さっきの、Aの表情が俺の心を追い詰める。
『…何、してんだよ…俺。』
行動を起こしてしまったことに変わりはない。
ひたすらに自己嫌悪と後悔の狭間で俺の心は揺れ動いていた。
―――・・
よし。うん、これで大丈夫。
『あー、…終わった。』
俺は仰向けにソファーに倒れ込んだ。
マジ疲れた…。
時計を見ると、あれから3時間は経っていた。
…そう言えば。
フッ…と、思い出したAのこと。
『……、』
起き上がり、寝室の方の壁を見つめてみた。けれど物音一つしない。
『…謝らなきゃ…。』
今思っても、Aに対して最低なことをしてしまったよなぁ…
俺、いつからこんな気難しい男になった？
いや、ただのワガママなだけか…
俺は謝罪の言葉を考えながら、目を閉じた。
…やっぱ、余計なことは言わずに
「さっきはごめん…」かな？
ダメだ…
なんか違う…
もっと、なんか、反省した言葉でなきゃ…
ダメ……だ。
.
.
『……んー、…？』
目が覚めたら…ソファの上で。
あれ、なんで…
体にはいつの間にかブランケットが掛かってて…
そうだ、昨夜Aに謝ろうと思って、そのままここで寝ちゃったんだ…
『A…？』
こんこん、と。中指でドアをノックするけど
返事はなくて…
まだ、寝てるのかなぁ…
そう思いながら
そっと、ドアを開けてみたけど
ベッドは、もぬけの殻で
枕の上にメモが置いてあった……。
“ちょっと、気分転換に今朝は海さんと釣りへ出かけてきます。”
これ…って、ひょっとしたら智くんも一緒なのか…？
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作者名：ミイ
| 作成日時：2015年3月14日 0時
