日常の音 Sho ページ3
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ガチャリと、玄関のドアの開閉音と
「ただいま…」って、Aの声が聞こえた。
そしてパタパタというスリッパの音。
いつもの聞き慣れた日常の音に
疲れていた俺の気持ちが解けていく。
リビングのドアへ視線を向けるのと同時に
Aがひょこ、と顔を覗かせて小さく笑った。
「翔ちゃん、ただいま。」
『おかえり…』
そして、そのまま嬉しそうに俺の方へと駆け寄って来た。
「帰って来た時に翔ちゃんが居てくれると、嬉しいね…」
それは、いつも俺が感じてる気持ちと同じ…。
「ひょっとして、お仕事？」
『うん。仕上げなきゃいけない原稿があって』
そう答えつつも俺の視線はすでにパソコンの画面へ向かい
Aもちらりとその画面を見たけど、
直ぐにまた二重の瞳は俺を見つめる。
「夕飯は、食べた？」
『うん、食った』
「ね…ひょっと…して、眠たい？」
『んー…、ちょっとね。』
「眠いなら、寝たほうが良いよ？」
『…大丈夫。』
「でも、やっぱり眠いと仕事がはかどらないし…無理しすぎるのは、」
『大丈夫だって、いちいち言われなくても俺自身のことは、俺が一番分かってるから！』
俺は口調を少し強めにして、Aの言葉を遮った。
イライラしていたのもあったし、早く原稿を仕上げなきゃって焦っていたんだと思う。
Aはぴたっと、身体の動きを止め、直ぐに小さな声で。
「ごめん…ね、邪魔しないから…」
そう言ってベッドルームの方へ行ってしまった。
『……、』
一瞬、謝ろうと口を開きかけたけど
そのまま、言葉を発しないで、深い溜め息を吐いてパソコンへと向き直った。
『…。』
ぱたん、と。寝室のドアが閉まる音がどこか遠く聞こえ
A、どう思ったかな……
嫌な気分になってないかな……
自分がとった態度を気にしつつ
何でも良いから、さっさとこれを終わらせようって思った。
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作者名：ミイ
| 作成日時：2015年3月14日 0時
