泣きそうな顔 ページ16
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「…ごめんなさい、何から何まで迷惑かけちゃって」
「迷惑なんかじゃないよ、どうぞ入って？」
港からそんなに遠くない一軒家。
そこに海さんの家があった。
「今、バスタオルと着替え用意するからお風呂に入って温まってきて？」
「…ありがとう」
今にも凍りつきそうなくらい冷えた身体は
温かいシャワーを浴びると、ゆっくりと息を吹き返していくみたいな感じがした。
だけど、私を海に突き落としたサキさんのことを思い出すと、なんか無性に悲しくなった。
彼女をあんなふうに追い詰めてしまったのは、私が原因なんじゃないかと思ったら、なぜかやっぱり罪悪感を感じる。
「お風呂、ありがとうございました。」
「身体、温まった？」
「はい、生き返りました 笑」
「…って、Aちゃんいつまで私に対して敬語使うの？」
「え…笑」
「友達なんだから、普通に話してよ 笑」
そう言って、温かいコーヒーが入ったマグカップを私に渡してくれた。
「そうだね…、私達…友達だもんね 笑」
笑いながら、海さんから受け取って飲んだコーヒーは優しい味がした。
「……ね、Aちゃん？」
海さんに名前を呼ばれて、顔を上げると
「Aちゃんは、何も責任を感じる必要はないんだよ……」
私の隣りに座った海さんが、コーヒーを飲みながら笑った。
「責任……って、別になにも…」
そんな下手な言葉でしか答えることができない私に、海さんが困ったように笑って
「今のAちゃんの顔、私と初めて会ったあの時と同じ顔してるよ……」
「…同じ顔？」
「うん、泣きそうな顔してる……笑」
海さんに初めて会った日は、翔ちゃんとサキさんのキスシーンを見た日だった。
今みたいにどうしていいのか分からなくて、海さんのお店に入ったのを覚えている。
「Aちゃんは、Aちゃんのままでいるのが一番なんだよ」
「私が、私のままでいる……？」
「そう。いい子でいる必要なんかないの……
自分の中で嫌なこと、理解できないことは無理して消化しなくていいの」
「……、」
「櫻井さんは、どんなこともきちんと受け止めてくれるから……」
「……」
「下手に隠したりしないで、正直に今日あったことを話すんだよ？」
海さんの言葉が、ゆっくりゆっくりと心に染み込んでいく感じがした。
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作者名：ミイ
| 作成日時：2015年3月14日 0時
