静寂の鷹【ハイキュー】

鷹のみぞ知る ページ9

継美side



久しぶりに面と向かってA先輩と話ができる。そう思ったらワクワクして昨日はあまりに寝られなかった。





A先輩は中学の頃から、ずっと憧れてきた先輩。中学時代はチーム内での温度差がズレとなってA先輩が陽の光を浴びることはなかった。





ところが高校に入ってからはみるみるうちにA先輩の名前が雑誌やテレビで流れるようになった。






以前より生き生きとプレーをする姿、入部を迷っていた時に見た感覚が蘇った気がした、いや、あの時よりも感動したと思う。






先輩に話したいことは沢山ある。でもそれは全部おじゃんになった。







「よく聞いてな継美ちゃん。うち、【バレー辞めるんや】」


「へ？」




自分でも素っ頓狂な声が出たのはよくわかった。



いや、それどころじゃない。



バレーを、辞める？



「な、なんでなんですか！！先輩バレー好きですよね？！じゃあ＿＿」



「＿＿継美ちゃん」




なんですか、その声。


なんでそんなに冷静でいられるんですか。



「次はあんたがエースや」



やめてください、私はまだまだA先輩みたいに＿＿



「わ、私は……」



『まもなく東京行きの電車が出発致します。黄色い線の内側にお入り下さい』



無情にも、電車のアナウンスでA先輩は電車へと足を運んだ。




「じゃあな、継美ちゃん。”頑張ってや“」




たった五文字に込められた思いはあの時の私には届かなかった。



只々、過ぎ去っていく電車の微かな風だけが頬に嫌にまとわりついた。

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