14話 ページ15
木虎side
噂だと思ってた、誰かが勘違いして流した噂。
噂であって欲しいと思っていた。
……でもその思いは簡単に壊れた。
「き、木虎ちゃん……こ、これにはわけがあってね。……取り敢えず離せ京介」
「なんでだよ」
繋がれた手に以前までは「田中」と「烏丸」だっのにいつ間にか名前で呼びあっている2人。距離も前でも近かったのにさらに近づいていて。
烏丸先輩は繋いでいた手を離そうとはしなかったし。
私がそこにいるはずなのに……と思ってしまった自分が嫌になって、何も言わずに走り出してしまった。
田中先輩が悪いわけじゃない、わかってるのに、わかってるのに＿＿
どうしても憎く思えてしまう。逃げたのだって、烏丸先輩が追いかけてきてくれるんじゃないかって、僅かな期待を抱いてしまった。
「……いた…」
「烏丸先ぱ＿＿」
烏丸先輩じゃない、追いかけてきたのは田中先輩だ。肩で息をしているから相当走ってきたんだと思う。トリオン体になっている私を追いかけて、トリオン体になっていない田中先輩が。
「嘲笑いに来たんですか」
「その……なんかごめん。多分木虎ちゃん勘違いしてると思って追いかけてきたの。私と京介はつきあってないし、ましてや私は京介のことなんとも思ってない」
「…」
違う、田中先輩が烏丸先輩のことをなんとも思っていないのは見ていればわかる。でも烏丸先輩は田中先輩のことが多分好きなんだ、どうしようもなく。
じわじわと視界が揺らいでぼやける。
好意を田中先輩に持っていると人がちゃんと近くにいるのに。それは私の好きな人なのに
黙っていると、先輩はいきなり私の隣に腰かけた。
「恨むなら好きなだけ恨んで、私を悪く言いたいなら言えばいい。それで木虎ちゃんの気が晴れるなら」
「え…」
先輩から発せられた言葉は予想外で、ましてや自分にとって嫌なことや不利益なものは何であろうが避けると言われているような先輩がこんなことを言うはずがないのだ。
「今の私にとっての不利益は木虎ちゃんが傷付くこと、悲しんでることだから」
こんなことを言う先輩に私は何も言えない。この人には一生敵わない。
ただただ、黙って私を抱き決める先輩の腕で泣くことしか出来なかった。
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弓月有無％(プロフ) - コメント失礼致します。昔拝読させて頂いており、こうして再び出会えて嬉しい限りです！甘い感じできゅんとしました！事情があると思いますので、気が向いたら続きや他作を読ませて頂きたいです。大好きなので！迚も面白かったです是からも応援しております！！ (5月5日 16時) (
レス) @page39 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - この作品を昔読ませて頂いていてすごく好きで久しぶりに読みたくなって探したのですが、続編が消えてしまっていました、、もし作者の方が見れるようでしたら続編復活してして欲しいです！！ (11月1日 22時) (レス) id: b4c10966c3 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 木戸司令じゃなくて城戸司令ですよ！ (2020年12月11日 22時) (レス) id: e84559c347 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とーすと | 作成日時：2020年4月6日 14時
