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「炎上の大晦日」(捌) ページ8

「玉藻前、だと……晴明殿、あの大妖怪と顔見知りであるのか!?」


陰陽師の一人が晴明に問い詰める。


晴明は玉藻前に睨みを利かせながら頷く。


「私の、母上の友人だ」


「その通り。葛葉は俺の親友だ」


玉藻前は扇子を扇ぎながら、笑った。


「晴明。葛葉に免じて、お前だけは助けてやっても良いぞ」


パチン、と扇子を閉じた音が、やけに冷たく響いた。


「ああ無論、都の人間共は全員血祭りに上げてやるがな」


「ふざけるなッ!!」


晴明の怒声が飛ぶ。


弧を描いていた玉藻前の唇が引き結ばれる。


「都から手を引け! さもなければ全身全霊を持って、お前を葬らねばならん!」


「やはりお前は俺の敵となるのだな晴明。分かってはいたが、悲しいよ」


溜息混じりに俯いた玉藻前だが、何かを感知しサッと顔を上げた。


刃のように硬化した紙人形が、目にも留まらぬ速さで玉藻前に特攻する。


「おっと」とわざとらしく戯けながら、頰辺りを掠めようとした紙人形を、首を傾け軽々避ける。


紙人形の持ち主は誰なのか、当然だが皆気がついていた。



「A! 無事だったのね……っ」


嬉しそうな声音であった神楽は、Aの顔を見るなり息を呑んで身震いした。


注目した先に、皆の知る温和なAはいなかった。


激憤に染まる、血走った目。


玉藻前を除く全員が、悪い意味でAの表情に釘付けとなっている。


皆が、初めてAを恐ろしいと感じ、鳥肌を立てた瞬間だ。



「玉藻前」



冷え切った声。



「よくも、よくも師匠を」



ごうごうと音を立てる炎に掻き消されない程、透き通った声。



「許さない……許さない……!!」



両拳を固く握り締めながら、Aは叫んだ。



「師匠……では、忠行様を手に掛けたのは貴様か!」


A同様忠行を慕う陰陽師達も怒りを露わにし始めたのを見た玉藻前は、フッと鼻を鳴らす。


「賀茂忠行……手強い爺様だった」


しみじみとした様子で、玉藻前は呟く。


「俺をあそこまで手こずらせたのは、彼が初めてだよ」


玉藻前に掴み掛かろうと歩み出したAを、焦った八百比丘尼が止めた。


八百比丘尼に両肩を掴まれつつ、Aは玉藻前を睨み続ける。


「何故師匠を……!」


「俺の復讐の邪魔をしようとしたからだ」


ほんの僅かにだが、Aの怒りが鳴りを潜める。


「復讐……?」


「A。君ほど聡明で心優しい子なら、きっと理解してくれるだろう」


玉藻前は語り始めた。

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設定タグ:陰陽師 , 陰陽師(ゲーム) ,   
作品ジャンル:恋愛
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イズモ(プロフ) - みつきさん» ふわっとした説明ですみませんが、そんな感じです! (2023年4月6日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - みつきさん» 容姿の詳細は読者様へお任せしていますが一応自分の中では……前髪ぱっつんのロングヘアで髪色はピンクラベージュっぽい色味の暗髪、瞳は桜のような色をしていて色素が薄めなのでフチが金色の瞳孔(黒)が見やすい……とイメージしています。服装は狩衣です。 (2023年4月6日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
みつき - 主人公の容姿ですがイズモさんは、髪の色や服装瞳の色、髪型などはどのように考えていますか?主人公についてです!できれば教えてください! (2023年4月5日 21時) (レス) id: 5d80019c07 (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - みつきさん» コメントありがとうございます! 主人公は式神ではないのでレア度は特に決めていません。晴明神楽博雅八百比丘尼と同じく陰陽師枠のつもりで妄想しました〜。 (2023年4月5日 12時) (レス) id: f0acbe1894 (このIDを非表示/違反報告)
みつき - どのくらいだと思いますか?SRくらいですか? (2023年4月5日 8時) (レス) id: 5d80019c07 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イズモ | 作成日時:2018年9月12日 22時

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