フィクサーの一声。 ページ5
何も出来ずただうずくまっていると、私の横から思いがけず声がした。
「あー、いつつつ……」
その声の主は、先程気絶したはずの沢田さん。彼は体を起こしながら辺りを見回すと、目を見開く。
「ごっ……獄寺君!!山本!!それに倉持さんまで!!なっ、なんで!?」
驚きの声をあげた沢田さんの方を向いて、ヒバリは言った。
「起きないよ。3人にはそういう攻撃をしたからね」
よく見えないが、それを聞いた沢田さんは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている事だろう……。
気がついたら仲間がみんな倒れていたんだから。
そんな沢田さんには目もくれず、ヒバリは続ける。
「ゆっくりしていきなよ。救急車は呼んであげるから」
ちょっ、それって、と明らかに戸惑った反応をする沢田さん。
しかし、窓の方を見て戸惑いが再び驚きに変わり、その後間もさほどなく、急に彼の様子がおかしくなった。
「うおぉおっ」
「死ぬ気でおまえを倒す!!!!」
そう叫び、唐突にヒバリへ突っ込んでいく彼。
(何があったんだろう……。この角度じゃ見えない)
視線をさ迷わせ、状況を必死に把握しようとすると私のことを呼ぶ声が聞こえた。
「A」
聴覚に意識を集中させて声の方向を探すと、どうやら窓の方からということが分かる。
少しマシになってきた痛みを堪え、体を窓が見えるように動かすと、小さなシルエットが確認出来た。
「リ、リボーンさん……？」
声を絞り出して、か細くその赤ん坊の名前を口にする。すると、彼はくりくりとした目をこちらに向けて淡々と言った。
「ああ。A、二人の闘い、しっかり見とけよ」
「えっ、どうし……」
私が反射的に返した言葉は、もう前を見ていた彼に届かず、返事を期待することはできない。
しかし、彼の指示ということは何か意図があるのだろう。
そう信じて再び体を反対側に向ける。
すると、沢田さんがヒバリに右ストレートを入れているのが見えた。
ヒバリに攻撃を入れることが出来るなんて……。私は自分の目を疑わずにはいられない。
次にヒバリは沢田さんに頭を引っぱたかれ、攻撃を食らった頭を抑えフラフラしている。
攻撃を甘んじて受け入れてしまったヒバリは下を向いたまま、機嫌が悪そうに言った。
「ねえ……殺していい？」
その一言だけで背筋がゾクッとするほど鋭い声に、ひとり勝手に怯む。
「そこまでだ」
まさに一触即発の雰囲気だったが、それは後ろから聞こえたよく通る声によって制止された。
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作者名：春夏秋冬 | 作成日時：2020年3月15日 16時
