【twst】幸福兎はワンダーランドの夢を見るか (ページ12)

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📗 ページ12

「君のことだから、『入院は嫌だ』と言うのでしょう？『療養をしなくてはならないほどの怪我はしていない』と言い張るのでしょう？」

「さすが先生、話が早くて助かります」

「全く、嘆かわしい……君の脳みそが君を騙そうとしても、君の身体はいずれその嘘に耐えきれなくなり瓦解しますよ。そうなったら君は……——」

「——『この世で最も醜悪な怪物となり朽ちていく』、でしょう？把握してます。その上で、今を生きています。いけませんか？」

　オズヴァルトは医院長の言葉を先読みして、言葉を続けた。彼は心底残念そうに深くため息をつくと、「話は以上です」と言葉を切りあげた。

「治療費はいつもの口座に振り込んでおいてください。それから、君が庇ったMr.バイパーにはキチンと謝罪をしておくと良いでしょう。君が目の前で出血をしたことに、彼は大変取り乱していましたから」

「はい、ご忠告ありがとうございます」

　オズヴァルトは医院長の言葉に頷いて、ベッドを降りた。スニーカーを履き、新しく用意してもらったらしい洋服に着替えてリュックサックを背負う。そして医院長に会釈してから、彼女は帰路に着いた。

　ここはトゥモロー・シティー。魔法の鏡でのみ往来ができる都市であり、エピックオブウェイストの本拠地が置かれている街でもある。オズヴァルトの生活圏もこの街であり、彼女の家があるのもこの街だった。

　オズヴァルトは後ろ手にリュックサックの中からスケッチブックを取り出して、箒が描かれたページを開くとそこから箒を取り出す。〈幸福兎の醒めぬ夢(ザ・ラッキー・オポチュニズム)〉、それがオズヴァルトのユニーク魔法。絵筆で描いたものを具現化する魔法であり、今オズヴァルトは絵の箒を具現化し実物の箒としてみせたのだ。

　箒に腰掛けたオズヴァルトは、自分の家に向かって進路を進める。その道すがら、オズヴァルトはスマートフォンをタプタプと操作してジャミルにメッセージを送った。