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ぱらり、
一枚のプリントが舞う音がした。
床に置いてきぼりにされたプリントが、
開いた窓から入り込む
風になびいている。
よいしょ、と拾い上げると
「あ、いた」
またもや、訪問者。
「あ、先生、これ忘れて、て…」
置き去りにされたプリントの存在に
気づいて戻ってきたのか
なんて思い口走ってしまうが
入り口に立つ人物は
最近よく会う男子生徒。
「先生じゃなくて僕でした」
「なんだ」
「なんだとはなんだ」
唇を尖らせて
いじけた振りをする彼。
ぷん、とでも効果音が付きそうな
それを無視していれば
「放課後話そうって言ったのに
全然図書室に来ないから、」
そうぶつぶつと呟きながら
教室の中へと入ると
教卓へ肘をつけて
こちらへ目を向ける。
教卓を挟み向かい合う形に。
ふ、と細めて笑う顔は
悔しくも綺麗で。
「だから迎えにきたんだよ、
お嬢さん」
柔らかそうな髪が
ふわりと風に揺れる。
昼休み、去り際のあれは
そのことだったのか。
「今日図書部は無い日だけど」
「うん、そんな気はしてた」
「暇なの？」
「暇そうに見える？」
「とても」
「はは、」
目を細めて可笑しそうに笑うと
すごく多忙なのに、
なんて口にする。
手にしたプリントを
先生の元へ届けなくては、
そう思って顔を上げると
廊下から女子生徒数人の声が。
聞き覚えのある声に
耳を澄ましていれば
腕を引っ張られる。
「っ、ちょっと…！」
「こっち、」
教室内の廊下側、
壁際へと足を運ぶと
机と机の間、壁に背をつけ
浅めに座る。
つられて彼の側にしゃがむと、
うわ、これ机から頭出て見つかっちゃうな、
なんて悪戯な笑みを漏らす彼。
と、途端に顔横へと彼の大きな手が伸び
後頭部に手を添える。
攫うように引き寄せられて
バランスを崩して
トン、と壁に手をつく。
「、？！」
「(シー、)」
と、
「あれ〜、ここにも居ない」
「最近すぐいなくなるねあいつ」
「王子〜どこだ〜佳奈が探してるよ〜」
「さすがに2年の教室にはいないでしょ」
「…でも、」
「ほんと王子のこと好きだね佳奈」
この教室を覗く女子生徒達の声。
探す相手が居ないとわかれば
次第に遠くなっていく
足音と声。
咄嗟のことで身体が強張り
息も出来ずにいると
「もう行ったみたいだよ」
そう口にすると
にこりと弧を描く唇。
あまりの近さに身体を
仰け反らせた。
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作者名：Ritz | 作成日時：2013年11月6日 22時
