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一日の授業が終わり、

部活動の時間が始まった。

私はというと

教室の棚に置かれた小さな観葉植物へ

水やりをしている所だった。

担任の先生に頼まれた、というよりも

言い方は悪いが

暇そうにしているからと

押し付けられた仕事で。


今日の図書部は

特に活動する事もなく

休みなのだが、

そういえば昼に入部したいと

言っていたあの彼に今日の活動は無い事、

言い忘れていたな、

なんて。まあいいか。


「お、吉野まだいた。

そこに積んであるやつ職員室に

持ってきてくれないか〜、よろしく〜」


ぼんやりしていると、

入り口から声をかけられた。

振り向くと沢山の本を両手に抱えた担任。

それ、とはきっと教卓の上に積まれた

ノートやらプリントやら。

言うだけ言ってそそくさと

居なくなってしまうなんて。


仕方なくそれらを持ち上げると

バランス良く積まれていたのだろうか、

わずかに斜めに傾けられると

あっという間に

床へ落ちていくノートとプリントたち。


はぁーあ、なんて

心の中で小さく溜め息をついてしゃがむ。

全て拾い立ち上がると

途端、

くらりと目の前が真っ白になった。

地面にまっすぐ立てているのかすら

わからない。

とりあえず、何かに捕まらなきゃ、

とは思うものの身体が

斜めに傾いていくのがわかる。


「おっと、大丈夫か?」


耳元に響いた声。

うっすらと目を開けると

見慣れた顔。

がっしりとした腕が私の

身体を支えていた。


「貧血?気をつけろよ」


声の主はパッと離れると

落ちた数枚のプリントを

拾い上げた。


トントンとプリントを綺麗に揃えると、

積み上げられたノートを

片手で抱え、

早く帰れよ、なんて言葉を

残して教室を出て行った。


「あ、せんせ、」


呼び止めようと上げた声は

届くはずもなく。


じわりと熱い頬は

未だに冷めてくれない。

触れた所の体温が上がって

じんじんしてる気がする。

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作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:Ritz | 作成日時:2013年11月6日 22時

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