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活字で文字の書かれたそれを
全ての文を読む前につき返した。
入部届なんてどういうつもりなんだろうか。
意味の解らないという顔を
していた私に、
どう思ったのか
「入部したいんだ、図書部に」
さっきとは打って変わって
真剣な顔つきで私を見下ろす。
くしゃくしゃになった
そのプリントには、
確かに入部届と書かれている。
だが、図書部とは
ただそう呼ばれているだけであって
顧問がいるとか、そういうような
他の部活とは違って
正式に部活とは認められてはいない。
けれど、貴重な放課後を
こんなチャラチャラした奴なんかに
奪われたくはない。
「図書部って、かなり大変だよ」
「え、ほんとう?」
「うん」
そう大袈裟に言ってやれば
大変なのは嫌だなあと眉を下げる。
「例えば、何するの?」
「…え、た、例えば、」
突然声を濁す私に何か思いついたように
ああ!と目を光らせた。
「本の整理とかかな」
「そ、そうそう…、本の整理とか」
明らかにわかりやすく焦る私に
くすくすと口元を抑えて
笑ってみせた。
「」
「」
言い訳も出来ずに俯けば。
「あーあ、僕傷ついちゃったなー
こんな嫌そうに断られちゃって」
そう言いながら顔を覆って
鼻をすする。
泣き真似をしているつもりなのだろうか。
どうすれば良いかわからなくなって
とりあえずごめんね、と謝ると
顔を完全に手で覆ってしまって
ひっくひっくと言うばかり。
廊下のど真ん中でこんな事してるから
すれ違う人がチラチラを視線を向けてくる。
なんなの、もう。
耐えきれず私は
「わかった、好きにして」
なんて言ってしまうのだ。
ひっくひっくが
くっくっくに変わっていく。
気付いたころには
それを待ってました、と言わんばかりの
笑声が廊下に響いていた。
腹を抱えて必至に笑いを堪える姿は
一瞬にして私を真っ赤に
させるには十分で。
「今日からよろしくね」
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作者名:Ritz | 作成日時:2013年11月6日 22時