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「五条っ!起きて、助けて!」
「うわっ…!?」
いきなり声が聞こえ、五条は飛び起きた。目の前には涙を流している永広。
「村が…!」
そこまで永広は言って、黙りこくった。五条は禍々しい気配を感じて耳を澄ます。
怪物が、目覚めた。
蓮川が、死んだからだ。
「生死確認は?」
「い、今、花澤さんと間宮さんと田所さんを見てきて、皆…」
3軒全て人が死んでいるのであれば、五条と永広以外全滅というのも可笑しくない。
逆になぜ、自分達が生きているのか。
「この家に結界が貼られてんのか…」
蓮川が残した最後の気配りは、自分達のみの安全確保。とことん嫌味な老いぼれだ。
「一応、全部の家行って、生きてる奴だけ回収。そしたら呪霊討伐だな」
「何を、するの」
「決まってんだろ。呪霊を祓う」
・
一軒一軒、家を見て回る。
一つ一つ、死体を運ぶ。
結果を言ってしまうと、全滅であった。
誰一人、息をしていない。中には、五体満足とは言い難い状態の人間も居た。
永広は現実を受け止められないのか、黙って死体を抱えている。血が服に付くことを、躊躇わず。
「これは田村さん。これは熊谷さん。こっちは武蔵さん。あれは佐々木さん」
数字を数えるかのように、死体を眺める永広を、五条は慰めることさえしなかった。
「…成仏してください」
両手を合わせて合掌。無機質な声で紡ぐ言葉も、先程から震えている息も、この場ではBGMにもならない。
幾らか経ってから、五条は永広に声をかけた。
「復讐してやるから、見とけ」
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作成日時:2021年3月9日 0時