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口からでまかせ。どうにか話を繋いで、永広が泣かないように慰めた。
子供騙しのその言葉は、無理があった。呪術師は多忙だ。自分の都合のみでは動けない。
それでも、それでもこの畑に何度でも連れて来て、楽しい思い出を楽しいままにしてやれればと、本気で思ったのだ。
「また来ていいの?」
「…多分」
「本当に?」
「……確信持てねーけど、不眠不休で良けりゃ」
休日を潰せば…何とか。段々五条は自信を無くす。しかし、永広は少しでも可能性を見出せた事に目を丸くした。
「────────良かった…!」
永広の口が、弧を描く。
キュッと目が細まって、いかにも嬉しそうな顔。
「っうわ、えっ、何、え」
「?どうかした?」
顔に熱がブワッと集まって、五条は思わず手で口元を抑えた。先程の永広の声が耳でこだまして、映像がフラッシュバックする。
永広が笑っている顔なんて初めて見た五条。
それは、不意打ちであり、会心の一撃。
「顔が赤いけど…熱中症じゃあ」
「やめろバカ、触んじゃねぇ」
顔を服でパタパタと扇いで、本調子を取り戻そうとする五条。しかし、結局顔の赤みが無くなるのに、5分かかったのだった。
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作成日時:2021年3月9日 0時