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死なないことが罪悪である世界があった。
予定通り死ぬことが正しい世界だった。

それこそがその世界を守るための手段で。
そうして確かに世界は守られていた。

世界だけが、守られていたのだ。

私がそれに気付けたのは、彼が、彼らがいたから。
死すべきとされた時に死ななかった彼ら。

『死にぞこない』と蔑まれていた存在。
世界から追いやられ、『モータルランド』と呼ばれる集団を形成していた彼らが。
私に、新しい生を教えてくれた。

――私は今からここに記録を残していこう。
『モータルランド』が確かに存在したことを、誰かに伝えるために。

彼らに救われた私が、彼らに返せる精一杯。
だからこうして筆を執る。

……正直に言うと、まったく慣れない作業だ。
言い訳をさせてもらえば、私の「生前」の「役目」は、物書きではないから。
不格好な文章ばかりを残してしまったら……そう考えて、今から緊張している。
ああほら、今の末尾など既に文字が震えてしまった。

何かを遺すというのは難しい作業だ。本当に。
でも、伝えたいと思うのも本当だ。

どうか、今これを読んでくれているあなたに。
『モータルランド』で生きた彼らの生涯が、少しでも伝わるように願う。

私も、私だって、誰かに何かを遺せることを――……、切に願う。

別れ際に→



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作者名:満月もなか | 作成日時:2017年7月24日 17時

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