お付き合いしましょう【森鴎外】

一目惚れ＊５ ページ6

結局あの後、連絡先を交換して二人と別れた。こんないい日は他に無いというくらいいい日だった。


「仕事はしないとね＿」


冴えない男から、ギラリと目が変わる。

白衣も脱いで黒のコートを身に着けた。


「中也くん」


「はい」


「今日はポートマフィアに潜りこんでいる鼠を処分しよう。検討はついている。思い切りやってくれ」


中原はもう一度頭を下げると、森が用意した資料を持って部屋を出ていく。

暗闇の中。裏切り者に制裁をくだそうとしている森の表情は、ポートマフィア首領(ボス)そのもの。意中の女性に目を奪われていた、恋する者には見えない。


「さて次は＿」


パラパラと紙をめくる音。

＿が、ある一枚で止まった。



その一枚抜き取り机の上に置いて、両肘をつく。


「……ほう…」


ただ個人的に興味がわいた内容だったのだ。マフィアの活動を邪魔しないのであれば、泳がせる。


「“若い女性を攫う男”、ねぇ…」


黒社会はニュースで取り入れるよりも情報が早く回って来る。この資料もおそらくそうだろう。

森は頭の中で、彼女を思い浮かべた。


もし、もしも、彼女に手を出したらその時は絶対に＿＿皆 殺 し 。



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