episode14 ページ14
「あ、途中まで送っていきますよ」
昼下がりの空の下、彼女は官舎の前でにこやかに笑って俺の横についてきた
朝借りたシャワーのおかげで俺とAさんと同じ匂いなんだな、と考えてから慌ててその考えを掻き消した。伊吹の馬鹿脳がうつったか
まだ死にたくない。桔梗隊長の顔が浮かんでて俺はぞっとする
「あ、あそこのカフェ苺のパンケーキが美味しいらしいんです」
官舎を抜けてすぐのところに通りがあって彼女は小洒落た店を指してそう言った。そこは最近出来たての店で
「それ伊吹も言ってたな」
「そうなんですか？じゃあ後で伊吹さんも連れて3人で行きましょうよ〜！」
嬉しそうに笑う彼女の顔を横目に見つめる。ひとつ頷いておいた
「そういえばAさん、昨日酔っ払った時のこと覚えてたりする？」
「んーまぁ覚えてます」
しゅんとする様子に責めてない、とだけ付け足しておいた
「人間慣れ、ってのは記憶にある？」
「あぁそれはですね＿＿＿＿って、あれ！」
気になってた答えが聞ける、と思った矢先。彼女が指さす先を見て俺は絶句した
あいつ！
そこに居たのはニヤけた面を引っさげた伊吹で！完全に勘違いをした様子で嬉しそうに手を振っている。あいつは俺が彼女を無事届けるために部屋に入ったところまで知っているのだ
「待て！伊吹！」
「だ〜いじょうぶだって志摩ちゃん。俺はこれでも口が堅いから」
「そういうことじゃない、普通に何も無かった。頼むから変な誤解だけはしてくれるな」
「え？そうなの？なんだぁ」
「なんかあったんですか？」
伊吹の肩をつかみこそこそと話していると彼女が心配そうにのぞきこんできた
「んーんなんでもないよ！Aちゃんがきゅるだって話」
「そうなんですか……あ、伊吹さんも来たところだし私はそろそろお暇しますね」
「え〜もっと話したいよう、あそうだ。今日401と404とで飲みに行きたいって陣馬さん言ってたんだよねAちゃんも来ない？」
伊吹はAさんにぴったりとくっつくんじゃないかって思うくらい近くて、肩を剥がそうとしてもなかなかに硬い
「ごめんなさい、今夜はもう予定があるんです」
ちょっと期待した。けど彼女は申し訳なさそうに笑ってから謝る
それから楽しんでくださいね！と手を振っていなくなった
「どんまい、しま」
伊吹のその声に「何がだ」と返し左手に引き摺って官舎の反対側へと向かった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あぶく | 作成日時：2024年3月27日 7時
