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1 (青s / 紫) ページ1

青side


"今日はずっとこんなんか…"

強く振り続ける雨を恨めしく思いながら客のいない店内を見渡す。

0時まで1時間切った頃、連勤の疲れも相まって早めに店を閉じようとドアの方へ向かった。


"俺が店長や、こんな日もある"


そうやって自分を正当化して、表の看板を"close"に変えるだけの簡単なお仕事……


の、はずだった。

馬鹿力で勢いよくドアを開けるまでは……



"ゴン"


鈍い音と共に、まるでスローモーションのように誰かが倒れる様を見ているしか俺にはできひんかった。


すぐに我にかえり、


「だ、大丈夫ですか?」



倒れている人を覗き込んだ。


肩を揺するも伏せられた目は開くことはなく、端正な顔はどこか青ざめていた。


スーツは長時間雨に打たれていたことを物語るほど水気を帯び、ふと触れたおでこはものすごく熱かった。


冷静に考えれば、救急車を呼ぶという選択をしたやろう。


だけど、その時の俺は自分のせいで人が倒れてしまった責任から店内へとその人を運びこんだんやった。




"この人を助けたい"



そう思わせる何かがあったんやって
不思議とそう感じた。


俺より少し低い背丈で驚くほど軽いこの人を横抱きにして、ソファに横たわらせる。


「ちょっと、待っとってくださいね」



バスタオルとフェイスタオルを急いでとって、ソファへと戻った。


濡れた服のままじゃ気持ち悪いよな、、
すみませんと心の中で謝って倒れたままの人のジャケットを脱がせた。


上質な仕立てのジャケットの胸ポケットの刺繍にある文字に目が止まった。
"Takahiro. H"


「た か ひ ろ…?」


あまり目にしない筆記体を辿々しく読み上げたその時、切長な瞳がゆっくり開いて

次の瞬間、まん丸になった。
上体を起こし驚いて声を出したいのに出せないのか、ハクハク口を震わせている。


申し訳ない気持ちでいっぱいになり、これ以上この人を驚かせないようになるべく優しい声で声をかけた。


「私が開けたドアにぶつかりあなたが倒れてしまったので、お店にお連れしたんです。驚かせてしまいごめんなさい」


そう言いながら、タオルを差し出した。


状況が理解できないままボーっとしているたかひろさん(でいいんよな?)

このままじゃ更に悪化する思て、バスタオルで体をくるみ、雨に濡れて滴がポタポタ落ちる髪をフェイスタオルでゴシゴシ拭き始めた。


されるがまま、目を瞑って俺に拭かれているたかひろさんを不謹慎ながらかわいいと思ってしまった。

2→



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こー(プロフ) - Shandyさん» 返信ありがとうございます!迷惑でなくて良かったです。Shandyさんのペースでいいので、更新楽しみにしています。わ……ありがとうございます!まさかそんな嬉しい言葉を言っていただけるなんて……!!ありがとうございます!私も更新頑張らなければ……笑 (2022年3月29日 23時) (レス) id: 88264f67b7 (このIDを非表示/違反報告)
Shandy(プロフ) - こーさん» 不快だなんてそんな、、、むしろコメントいただけて久しぶりに書きたい欲が湧きましたので感謝です♪こーさんのお話の世界観私も大好きです(^^) (2022年3月29日 22時) (レス) id: 18b5a9219f (このIDを非表示/違反報告)
Shandy(プロフ) - こーさん» 初めまして♪コメありがとうございます!青紫お好きなんですね。片隅に放置していた話を見つけてくださり設定や世界観を好きとのお言葉とても嬉しいです。私も青紫大好きなのでなんとか続きを書きたいと思っています。もしパスをかける時はちゃんとヒントを添えますので (2022年3月29日 22時) (レス) id: 18b5a9219f (このIDを非表示/違反報告)
こー(プロフ) - 不快に思われたら無視してください。突然のコメントで失礼なのをわかった上でコメントしました。不快になられましたら本当にすみません。 (2022年3月28日 17時) (レス) id: 88264f67b7 (このIDを非表示/違反報告)
こー(プロフ) - 突然、大変失礼致します。初めまして。青紫が好きでこの作品に出会いました。このお話はパス掛けしないで頂きたいです。突然のコメントに要望、迷惑だと思います。本当に申し訳ありません。世界観や設定がとても好きで読めなくなるのは悲しいのでコメントしました。 (2022年3月28日 17時) (レス) id: 88264f67b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Shandy | 作成日時:2020年11月23日 16時

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