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佐野の場合は中身よりその喜びなどを共有したいタイプで、感覚的にそれをすることで楽しくて嬉しいのだろう。ただの憶測ではあるけど、ずっと見てたからわかる。
「Aくん、今から僕に何聞かれてもマスクって返してください」
『なんで？』
「いいから」
『ええよ』
「Aくんの声が好きです」
『マスク』
「髪質が羨ましい」
『マスク』
「アッシュカラーかっこいいです」
『マスク』
「手繋ぎたいです」
『マスク』
「抱きしめられたいです」
『マスク』
「甘やかしてください」
『マスク』
「会いたいです」
『マスク』
「好きです」
『マスク』
「ミックス」
『マスク』
「………なんだ、引っかからんやん」
思ったより長かった尋問のような掛け合いは佐野の落胆した声で終わりを迎えた。
正直何をしたかったのかわからなかった。
ただ、だんだんと涙声になっていった佐野が、寂しがってるんだろうなという片鱗がちらほらと。
東京と大阪の問題じゃない、物理的なものじゃなくて…別の、遠さ。
「Aくん」
『聞いてるよ』
「ビデオにして、ええですか」
『うん』
切り替わった画面を傍目で見るとやはり泣きそうな顔をしていて。
流石にながらで対応しちゃいけない気がして作業の手を止めた。
『佐野。泣きたい時は泣き』
「泣いてないです」
『じゃあなんでそんな顔しとんの』
「イヤです」
『佐野』
否定するたびにくしゃくしゃになる顔を見て、心が痛む。
街灯に照らされてるだけでも俺にははっきりと見えていて。
「だって僕が泣くときAくんいつも寄り添ってくれたもん…！だから泣かん！」
佐野は、親しくなる前は静かにくっついてくる子だった。
本人は俺に対して緊張してたって言ってたけど、多分懐いてなかっただけ。
経歴を知った時から何かと気になって、手をかけていた後輩。いた世界が似ている佐野に無意識に情が沸いてたんだと思う。
ジャニーさんにもきっと2人は波長が合うからって言われてたな。
気付けばニコニコと俺の名前を呼んでずっとついてきて、雛鳥のような存在だった。
後輩というより子供みたいな、手塩に掛けていた子。
それが今では親離れの出来ない子供。
自分で餌を取れるのに、親の帰りを待つような雛鳥。
どこで子育てを間違えてしまったのか。最初からなのかな。
その答えが俺にはわからないし、誰も教えてくれない。
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マスクについて回収する間がなかったので211117のヤンタン視聴をどうぞ
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