僕のはなしきいて ページ7
※台詞多め
ここ最近家に帰ってもやることが多くて、睡眠時間が減っている気がする。
今日は少し早く帰ってこれたのにもう日付が変わる頃で、軽く溜息を吐く。
1日24時間だと足りない現象、まさに今起こっている。
デビュー日を過ぎてから多少落ち着きつつあるが、重なる台本の読み込みに音楽関係の役割をこなすだけで家にいる自由な時間は潰れる。光栄なことだと思えばそれまでだが。
ふと携帯を見ると1件の通知。開くと「今いいですか？」の一言。
大丈夫と返すとすぐに既読はついて電話がかかってくる。ちょっとびっくりした。
『お疲れ様』
「Aくん、おつかれさまです」
心地の良い声色は佐野のもので。
少し喧騒的な雑音が聞こえるから外にいるのだろう。
『仕事帰り？』
「はい。さっきまでラジオやったんです」
『まだ未成年なんやから、気ぃつけて帰りよ』
「はーい。僕はもう子供じゃないけど」
『はいはい。帰るまで繋いでてええから』
「へへ。Aくんだいすき」
鼻歌を歌いだした佐野に笑みが零れる。
佐野はたまに…というか、週に1回は必ず電話をしている気がする。1回だと少ないほうで、短い時間でも繋げたがる。理由は深く聞いたことはない、これは佐野を甘やかしてしまってる原因の一つなんだろうか。
「腕時計見る時ってグーの手になります？」
『うーん…がっつり握らんかも』
「やっぱたまご一個分くらい空きますよね」
『多分。遠目から見たらグーなんちゃう』
「そういうもんなんかな」
「ティラミスって本場の発音はティラミスーなんですって」
『uにアクセントついてるからな』
「なーんだ。やっぱAくん語学強いですね」
『私を引っ張ってって意味なんよね』
「それも知ってんのー！？あ！でもそれを私を元気づけてって意味になるんですよ！」
『あーなるほどな。晶哉詳しいな、イタリア語勉強してんの？』
「僕も今日知りました。たまたまです」
「教室の席って、前のほうが先生の視界に入らないらしいです」
『結構それ言われてるよな』
「…やっぱり有名なんすね」
『まあ知らんほうが幸せなこともあるわな』
定期的に佐野が知識披露するときは大抵番組かラジオのあとだったりするし、それかも。
自分の知ったこと感じたことを共有したいところが可愛い。なにわ男子にもいるけど、やっぱり親の気持ちになって心が穏やかになる。
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