◆まだぎこちない間柄 ページ33
ドラマの撮影がはやめに終わったので息抜きに楽器に触れようとスタジオに向かうと、使える部屋がないみたいで。家に帰ろうとしたところを引き留められる。
近場のスタジオに顔を出しただけで家でもよかったのだけれど、他のジャニーズの人が練習している共同スペースはどうかと誘われ、せっかくなので頷いた。
固定の稽古場がない俺達はこうやって場所を見つけるしかない。
誘われたからOKしたものの、先輩とも後輩ともわからない相手に申し訳ないことをしたかも。
通された部屋の前に行くと、中で誰かがギターを弾いているところが見える。
扉を開くと激しい音が耳を刺激して、少し気分が高揚する。
やっぱり音楽を浴びるのは気持ち良い。
こっちに気付いてないみたいだから邪魔をしないように静かにケースを下ろす。
関西Jr.の中では随一っていってもいいくらい、ギターが上手い男だ。しばらく見学しよう。
しかしこんなにも気付かないものだろうか。
それくらい集中してるのか、のめり込んだら周りが見えなくなるのか。
そんなことを思っていたら音が止んで、気を緩めながらこちらを見た。
「え、あ？え？」
『お疲れ。なんか飲む？』
「え？なんで…？え？」
『とりあえず汗拭き』
タオルを差し出すと動揺しながらも受け取って汗を拭いていく。
代謝が良いと噂には聞いていたが、本当に凄いな。
そういえば面と向かって個人で話したのは初めてかもしれない。そりゃ驚くか。
『ごめんなぁ。ここで一緒に練習してもええ？』
「え、はい。え…ここに来るん間宮くん、だったんですね」
『なぁに？後輩が来るとでも思っとった？』
「いえ、あの…そういうわけでは」
西畑と同い年なんだから、俺ともタメなのに。
俺が先輩で、絡みも特にないから敬語だしガッチガチの後輩は面白い。
笑ってばかりじゃ可哀想だから、そこそこにしなくては。
『正門くんはいつも練習してるって聞いてたけど、本当やったんね』
「はい…間宮くんがここによく来てるのも知ってました」
『ほんま？声かけてくれればええのに』
「そんな、無理ですって。話しかけたこともないのに」
『それもそうか』
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