なにわの白③【男主】 (ページ34)

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お互い、他人のような距離感にまた笑いが込み上げる。
同じ関西Jr.なのにこんなに壁があるなんて不思議。西畑や永瀬には笑われるだろうし、康二にすらなんで？って言われそう。

『セッションしよ』
「…！いいんですか」
『人がいるなら一緒にやったほうが楽しいやろ。俺なんでもええよ、何しよか？』

持ってきてるのはベースだけど、ここには元々セットが置いてあるしレンタルすればいくらでも融通が利く。
こんな他人みたいな先輩にいきなり言われてもすぐ答えられないか。なんて思ってる束の間。

「ギターが！…弾きたいです。間宮くんと」

返事がすぐ返ってきた上に、真面目な顔と強い熱意で大きな声を出すからびっくりしてしまった。

『大きな声出るんやね』

思わずこんな言葉も出てしまう。ごめんな正門くん。

「すみません…」
『褒めてる！褒めてるからわかりやすく落ち込まんで！！』

シュンとした正門くんは捨てられた犬みたいだ。
年上みたいな顔してるのに、急に後輩っぽくなって俺も動揺してしまいそう。

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ギターを鳴らしだすとお互い言葉ではなく音で感じ合えて。
ぎこちない間柄だったから余計、素直に音のやりとりが出来ている気がする。

それはあっちもそうだったみたいで、喋ってる時とは違って柔らかな顔で楽しそうにしている。
安心した。これから共にしていく相手とぎこちないのはやりにくかっただったろうし。

アイコンタクトを取るたびに無邪気になる正門くんは、やっぱり年相応なのだと思った。
もしかしたら俺も、そんな顔をしていたのかもしれない。

「今日はありがとうございました」
『こちらこそ。正門くんみたいな子おらんから、楽しかった』

楽器が触れる子はいても、ここまで達者な子はなかなかいない。
だからこんなに楽しかったのかな、後輩と合わせたのはこれが初めてだからなんとも。

　

グループに所属していた俺は、近いうちバンドを率いることになるなんて、この時は考えてもなかった。