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食堂を出ると同時に引っ張られる感覚。
その力に抗うことなく従うが、口が緩みそうになり抑える。
『野上さん嫉妬ですか』
「別に」
『俺がみんなの注目受けてるから嫌だったんでしょ』
「うるさい」
『野上英敏さんは本当に俺を独り占めしたいんですねえ』
「それはお前だろ」
『まあそうだけど』
「…お前なあ」
溜息を吐きながら外のベンチに座るので、そのまま俺も隣に腰掛ける。
怒ってそうだし少し自重して距離をあけたらシュンとした顔をしたのでピッタリくっついた。
いや、可愛い。何この人…今、犬耳のようなものが見えましたよ。幻覚？
ツンデレ彼女になるかと思いきやわりかし素直になっていった野上は、俺が近くにいれば基本プリプリ怒ることはなくなった。多分。
この恋人に自分が愛されてる自信が生まれたのは俺が純粋に愛を注ぎ込んだ賜物かもしれない。
ある程度お互い何を考えてるのか理解するようになったのもあるだろうけど、その証拠に他の奴らへのマウント精神は悪化している。
昔は俺のこと好き？って聞いても好きって言ってくれなかったのに、今は…。
『随分と素直になったよねえ…』
「何が」
『ん−ん。こっちの話』
「Aが考えてることが大体俺のことだろう」
『まあね。英敏俺のこと大好きだからな〜って』
「ああ。好きだな」
『俺も』
あれ？こんなほんわかムードでここまで来たんだっけ。
思わず首を傾げてしまった、そういえば俺怒られる前だったのでは。
これも増えた傾向だが、年を取ったのか簡単に怒り感情がなくなってしまうみたい。
俺も野上も恋人に大して甘っちょろいのだ。すぐに絆されて許してしまう。
ぼけっとしてたら頬を抓られる感触。
そのまま右を向けば拗ねた顔を作る野上。可愛い。
『どうしたの』
「お前があんなことする必要なかっただろ」
『助け合い精神の環境にしたのは野上だろ』
「……」
『英敏さんですよ』
「ああ言えばこう言う…」
野上がふたりきりの時だけ名前で呼べと言うのもだから、未だに癖で名字で呼んでしまう。
こういう時、名前で呼ばないと返事もしてくれない……俺が悪いんだけど。
『源田が熱でぶっ倒れてんの知ってるでしょうに』
「他にもいただろ、料理できる奴」
『あのまま俺がいなかったら食堂爆発してたんじゃないか』
「男子校のデメリットが嫌なほど出ているな」
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