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「これはもう要らない」
『せっかく買ったのに』
「…まだ怒ってるのか」
『結構傷ついた。俺じゃそれ、似合わないし』
「それは」
『今度は俺に似合うやつ買ってよ』
俺の言葉を飲み込むのにワンテンポ遅れる野上。
その間に手から奪い取って、野上が買ったバレッタを見てみる。
あーあ、野上がプレゼント買うの初めてだったかもしれないのに。
こんなんに奪われて、やっぱりショックだな。
さっきと違って一部が変形してる、なんでだろう。
道中で転けた？どこかぶつけたのかな、大丈夫なんだろうか。
「次はお前と出かけるために、島の外に出る計画でも立てよう」
『……わお、デートのお誘い？』
「なんだそのアホ面は。捨てるなら捨てろ、それ」
少し現実的でないことでも、野上は簡単に叶えてしまうからな。
『俺、お揃いの何かが欲しいな』
「なんでもお揃いにしたらいい」
俺への罪悪感が残ってるのか、本当に俺を甘やかしてくれてるのかわからないけど。
野上が柔らかく肯定するから、チョロい俺の心は満たされる。
『あ、でもその前に聞きたいことあるんだけど』
手の中でバキリ、と音が鳴る。
思ったより俺のストレス値は高かったみたい。これじゃ直しようもないな。
「なんだ？」
野上は気付いてなさそう。
まあ俺に委ねられたっぽいし、捨てろって言ってるしいいか。
『野上のこと食べちゃいたいっていうの、本気なんだけど』
「ばっ、」
後ろ手に投げ捨てたそれは、綺麗にゴミ箱に落ちる音がした。
照れている野上はもう捨てたゴミのことなんて頭にないだろう。
単純で可愛らしい人。
『野上だってずっと続きがシたいって言ってたじゃない』
「そ、そうだが」
『今更怖くなっちゃった？』
少し前までは野上のこと大事にしようと思ったけど、今回の件で吹っ切れてしまった。
まだまだ問題は山積みだけど、そんなのあとでどうにかなるよね。
可愛い可愛い野上には、一度身体に教え込まないといけない気がする。
俺がどれだけ愛してるか、不安にならないように。
「寮の壁、薄いだろ」
『大丈夫。使ってない部屋あるから』
「本気か？」
『うん。俺今余裕なくなってきたくらいには抱きたいよ』
「ムード云々言って先伸ばしてたの誰だ…！」
『俺だね』
「俺を大事にしたいって言ってたのは」
『それも俺だ』
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