【メンズ校】Amour à l’infini ③【男主】 (ページ29)

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参った。動けん。

野上とふたりきりになってどのくらい経ったか。
そんなでもないような、長かったような。

ふたりになった途端横から抱き着いていた野上が無言で正面から抱き着いてきたから、そのまま抱きしめた。
何を言うわけでもなく、別に泣いてるわけでもなく。

どれだけ時間が経とうが野上がいるだけで幸せだし俺はこのまま死んでもいいくらいだけど、まだ野上とやりたいことたくさんあるし死なないかも。
我儘な王様をどうやって落ち着かせたらいいんだろう、そもそもこうなったの野上がアレ持ってたからなんだけど。

『野上』
『のーがみくん』

さっきからこうだ。声をかけてもちっとも反応しない。
ちょっと寂しくなってきた、野上の声が聞きたいし、顔も見たいのに。

『……ねえ、そのままでいるなら食べちゃうよ』

耳元で囁けばピクリと反応して、ゆっくりと顔をあげた。
腕の力は変わらず強いまま、やっぱり我儘な王様だ。

「宣杜」
『はい。宣杜です』
「…ごめん」
『え』

一瞬存在そのものを否定されたかと思って心臓が破裂するかと思った。
少し離れてポケットから出したそれを見て、何の謝罪か理解する。

『なんで謝ってるの』
「お前に嫌われたくないから」
『嫌ってないよ。怒ってたの』

さしずめ島に出たときに買ったであろうバレッタ。
養護教諭に渡すつもりだったんだろうと、誰かから聞いた。

その事実を勝手に知って、勝手に傷ついただけだ。
やっぱり野上は一度でも惹かれたのだと、ショックだっただけ。