第161話「似た者同士の会合」 ページ36
「捜し物はこれかい？」
ロシア帽を被った太宰は手を振った。
一連の黒幕，“魔人”ドストエフスキーに。
仮面ノ暗殺者を使って福沢，そして森を襲わせた。
「ご用件は？」
「社長に盛った毒の正体を教えて貰おうか」
彼の目的は『本』を得る事だ。
その為にはヨコハマの異能者を根絶やしにする必要がある。
しかし彼等《鼠》には街ごと焼き払う兵力が無い。
「だから暗殺で探偵社とマフィアの
「何故そう思うのです？」
「私ならそうするからさ」
「似た者同士という訳ですか。良いでしょう。
ぼくが盛った毒は『共食い』の異能です」
彼は不気味に笑う。
紫の瞳には闇の光が宿っていた。
「二組織を潰すのは私ではありません。貴方がたです」
福沢と森に植え付けられたウイルス型の異能は，48時間かけて宿主を殺すが，宿主の何方かが死ねば異能は停止する。
つまり，片方を救うには片方を殺さねばならない。
「人は罪深く愚かです。策謀と知っていながら殺し合うのを止められない。誰かがその罪を浄化せねばなりません。故に，ぼくは『本』を求めるのです。
……こんな風に」
瞬間，銃声が響いた。
太宰の腹から血飛沫が舞う。
「狙撃手…私の行動も予測済みか……」
ドストエフスキーは微笑む。
立ち去ろうとする彼に太宰は口を開いた。
「君と私は……同類だと云ったね、確かに同類だが一点だけ違う」
脳裏に浮かんだのは，真紅の髪を靡かせた少女。
人外である事，自分を否定した世界を憎みながらも，相手を思いやる優しさを持つ，強い彼女。
「…確かに人は皆罪深く愚かだ。だからいいんじゃないか」
『本』とは，一冊の小説。
書いた事が真実となる白紙の文学書。
「えぇ，ぼくはその本を使って罪の_____
異能者のない世界を創ります」
「やってみ給えよ______やれるものなら」
二人の瞳に宿るのは，決意と強い意志。
似た者同士だからこそ負ける訳にはいかない。
「貴方は……“紅桜姫”という女性をご存知ですか」
「？」
ふと口を開いたドストエフスキーに太宰は怪訝そうな表情を浮かべた。
「又の名を，“死神の愛し子”」
「！」
「“死神”に愛された罪深き少女…それが花柳蓮華です」
「彼女に何をする心算？」
その問いにドストエフスキーはただ妖しく微笑むだけだった。
「ではいずれ，『約定の地』にて」
やるべき事は済んだ。
後は，彼女を目覚めさせるだけだ。
第162話「失われた惨劇と記憶」→←第160話「桜の木の下には……」
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます！気に入って下さって何よりです！ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします！ (2020年3月26日 0時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか？いつも楽しく読んでます！更新できる時にして無理しないでください。待ってます！ (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2020年1月11日 0時
