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第160話「桜の木の下には……」 ページ35

蓮華は当てもなく走っていた。
追わずには居られなかった。
幾度となく現れた,あの白い襟巻きの青年を。



『追いかけへんと』



姿も見えない。血の匂いも感じない。
抑も自分は彼の事を何も知らない。
それでも足は止まらない。



「何処行った………ッ!」



気がつくと街外れまで来ていた。
蓮華は両膝に手を付いて息を整える。
走っていた所為で額に汗が滲んだ。



『………阿保か私…仮に追い付いて如何する心算…』



あの青年には謎が多い。
知ってる事と云えば,容姿と何故か右腕と左脚を無くしている事だけだ。
しかし,少なからず彼には助けられてきた。
恐らく…敦や鏡花の事も。



『黒い髪と紅い瞳,ねぇ…』



二人はそんな容姿の男の人に助けられたと云っていた。
組合戦後の宴で見た青年は,一部だけ紅のメッシュが入った黒髪を束ね,血のように真っ赤な瞳をしていた。
彼の姿を見たのはあれ一回だけだったが,とても印象的だった。



『来るな』

「!」



何処からとも無く声が聞こえた。
思わず顔を上げて辺りを見渡すが,声の主の姿は見えない。



『此方に来るな』



耳を澄ますと声は暗い森の奥から聞こえてきた。
よく見ると木々が生い茂っている中,一つだけ不自然に作られた一本道があった。



「悪いけど,それは聞けへん」



蓮華は直感していた。
今の声は,夢で聞こえた声と同じだと。
そして声の主は白い襟巻きの青年だと。



「私は,貴方を知りたいから」



蓮華は一応警戒しつつも,森の中に足を踏み込んだ。
人の気配は驚く程しなかった。
もしかしたら随分前から誰も出入りしてないのでは無いだろうか。



「!」



森が開けて日光が差し込む。
突然の光に目が眩んだが,すぐに視界は元に戻った。



「わぁ………」



少し高い丘のような場所に立つ一本の桜の木。
それは満開に咲き誇り,薄紅色の花弁を散らしている。



「でも何で桜が………未だそんな季節じゃないのに」



蓮華は首を傾げながらその大木に近付くと,太い根が張った麓の割れ目に黒曜石の石碑が置いてあった。
その石碑には文字が彫ってある。



“我が愛しき妹 紅桜姫(べにざくらひめ) 安らかな眠りを”



「紅桜姫……?」



***



10,000hit超えましたやったあ!!
更新が滞りがちなのに沢山の人に読んで貰えて光栄です!待って下さった方々本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!
☆星木雪野☆

第161話「似た者同士の会合」→←第159話「仮面ノ暗殺者」



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作品ジャンル:アニメ
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます!気に入って下さって何よりです!ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします! (2020年3月26日 0時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか?いつも楽しく読んでます!更新できる時にして無理しないでください。待ってます! (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2020年1月11日 0時

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