第156話「鞄の捜索」 ページ31
その依頼の内容は大金の入った鞄を指定企業まで届ける事だった。鞄はヨコハマの港付近に停泊している船に置かれているらしい。
「難しい任務じゃない」
「ええ。ですが………」
「どの船?」
港にはかなりの数の船が海に浮かんでいた。
敦曰く,船の情報だけ無いらしい。
この中から目的の船を探すのは骨が折れそうだ。
「手分けして捜すしかない」
「ですね」
***
「鏡花,ありました?」
「…無い」
「そっか…このままやったら日暮れるかもな」
「一度社に戻って手伝って貰う?」
「そうですね。敦,社に戻って………」
振り返って呼び掛けたが,敦の姿は何処にも無い。
蓮華は深呼吸して嗅覚に意識を集中させた。
「……何してるの?」
「敦の血の匂いを探ってるの。一度血の匂いを覚えて仕舞えばそれ程遠くに居ない限り嗅ぎ分けられるから」
「…彼の人の血を吸った事があるの?」
「まぁ………一応」
蓮華は気まずそうに鏡花から目を晒した。
不意に彼の優しい血の味を思い出して,喉が渇いた。
『それ程遠くには行ってなさそうやな……』
風に乗って運ばれる残り香を辿りながら歩いていくと,海の近くまで来た。
しかし磯の香りで血の匂いが途絶えて仕舞う。
『海の中で消えとる………」
「蓮華,あれ」
鏡花が指を指す方に目を凝らすと,何かが浮かんでいるのが見えた。
しかも磯の香りに紛れて微かに血の匂いを放っていた。
「敦!?嘘やろ!?」
「夜叉白雪!」
船を捜していた筈の敦は何故か全裸で海に浮かんでいた。
***
「敦……見つけたのが私達で無ければ変質者として通報されてましたよ」
「返す言葉も無いです………」
あの後,ずぶ濡れの敦と“うずまき”にいた筈のモンゴメリと合流した。
「書類にあった船はこの先よ」
「信用出来ない」
「貴女の信用なんて欲しくなくてよ」
「まぁ落ち着きなさいな。
貴女は書類の不備に気付いて私達に知らせてくれたのでしょう?」
「………」
モンゴメリは複雑そうな表情で蓮華を見遣る。
しかしすぐに諦めた様に溜息を吐いた。
「此処よ」
彼女が案内された船には依頼の鞄があった。
「あら」
「妙だな…中身が無い」
「あたし盗んでないわよ!?」
「底に何かある」
鏡花がそう云って取り出したのは付箋の貼られた調査報告書だった。
「入社祝,ですか?」
「!」
その報告書には,鏡花の両親が死んだ日の出来事が記されていた。
134人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます!気に入って下さって何よりです!ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします! (2020年3月26日 0時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか?いつも楽しく読んでます!更新できる時にして無理しないでください。待ってます! (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2020年1月11日 0時