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第152話「天使じゃない」 ページ26

親子連れで賑わう公園。
其処に現れた太宰と敦の姿にQは目を見開く。
そしてどうして,と云いたげに蓮華を見上げた。



「私が連絡しました。クレープを買いに行く為に貴方から少し離れた時に」

「…ッ何で」

「君を連れ出したマフィアの裏切り者は捕らえられた。もう君が彼女と居る必要は無いからね」



その言葉を聞いてQは悲痛な表情で俯いた。
すると近くで車が停車し,中也が降りて来る。



「真逆,蓮華と一緒にだったとはな」



Qを連れ出した裏切り者を捕らえたのに肝心の本人が行方知れずだった為か,中也は若干苛ついていた。



「帰るぞ」



中也が怒気を滲ませて云うとQは蓮華の背後に隠れた。



「……久作,お迎えが来ましたよ」

「………帰りたくない」

「貴方もこうなる事くらい,最初から判っていた筈です。だから私の携帯を取り上げたのでしょう?」



蓮華は目線を合わせて諭す。
しかしQは首を勢い良く振った。



「嫌だ!絶対に嫌だ!どうして帰れなんて云うの!?
天使様は僕を救ってくれたのに,味方だって云ってたのに,何でそんな事云うの!?」

「だからこそ,貴方はもう帰るべきや」



癇癪を起こしていたQは思わず言葉を止めた。
見上げた彼女の瞳が、紅色に染まっていたから。



「このまま逃げても孰れ捕まる。そしたら貴方はもっと傷付く。それだけは嫌やから」



Qは涙目で蓮華を見つめた。
彼女は連絡を入れたのは全て自分の為だと云ったのだ。
そしてそれに,と続けた。



「私は…貴方が思っている程,綺麗やない」



蓮華は視線を彷徨わせ,少し躊躇いがちに云った。



「だって,吸血鬼やもん」

「…え………?」



Qは目を見開いた。
当然だ。いきなり吸血鬼だなんて云われてすぐ受け入れる筈がない。



「それを今,証明してあげる」



すると蓮華はQの手を取ると,ゆっくりと口元に近付けた。
その様子に太宰はハッとする。



「駄目だ蓮華ちゃん!それはッ」



かぷり,と小さな音がした。
その瞬間Qの手から血が流れた。
そして蓮華の首元にQの異能である詛いの手形が浮かび上がる。



「…天使様,今のって……」

「噛んだだけ。血は吸ってへんよ」



蓮華が傷口を舐めると血はすぐに止まった。
その仕草にQは顔を真っ赤にするも,恐る恐る尋ねる。



「本当に……吸血鬼?」

「うん」

「物語に出て来る…アレ?」

「そう」

「異能じゃないの?」

「違うで」



蓮華は紅色に染まった瞳を向けて,哀しく微笑んだ。

第153話「吸血鬼と少年の約束」→←第151話「楽しい時間は終わりを告げる」



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作品ジャンル:アニメ
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます!気に入って下さって何よりです!ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします! (2020年3月26日 0時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか?いつも楽しく読んでます!更新できる時にして無理しないでください。待ってます! (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2020年1月11日 0時

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