第144話「吸血鬼は恋にうんざりしている」 ページ18
「何故男性は何時もあの型の女性に靡くのです？」
街を歩きながら樋口は不満そうに云った。
彼女も如何やら“黒髪の撫子”を探しているらしい。
「とは云え私は貴方を応援します人虎。
女性は強く押し切られるのを望むもの！心で当たりなさい」
樋口は勘違いをしたまま敦に的確なアドバイスをする。
途中から自分の好みを混ぜて来た辺り，『判りやすいなぁ』と苦笑した。
一方敦は助けを請う目で蓮華を見た。
「蓮華ちゃん……」
「まぁ……樋口さんの仰る事は間違ってないと思いますし，その言い分も判らなくはありません」
「矢張りそう思いますか！」
「あと貴女が目付きが鋭くて近寄り難い雰囲気の殿方が好みと云う事が良く判りました」
「んぐぅッ！」
聖母のような微笑みで図星を突く蓮華。
何となく樋口が誰の事を思っているのかを悟ってしまった蓮華は，完全に他人の恋路を楽しんでいる様子だった。
「マフィアと云っても矢張り女性なんやねぇ。
一途に恋をしていらっしゃる。しかも判りやすいし」
「ぐぬッ……そう云う貴女は如何なんですか！」
「如何って？」
「吸血鬼とは云え貴女も乙女。好きなタイプとか恋の一つや二つあるでしょう！」
「あー……私そう云うのもう懲り懲りって云うか。当分恋なんてしなくて良いかなって。好きなタイプとかも別に無いし」
「貴女それでも年頃の乙女ですか！？」
樋口は冷め切った顔をした蓮華の肩を掴んだ。
蓮華は婚約者争いの所為で恋愛については達観している。
昔，チンピラと喧嘩しているのを婚約者に見られて婚約破棄になった事がある。
「恋文を渡すのは彼では無いぞ」
その時聞き覚えの無い声が聞こえた。
振り向くと，蒲団に包まった男が立っていた。
「我が恋熱の行方，見届けぬ訳にはいくまい」
「花袋」
「……もしかして，元探偵社員の異能者って」
「うん。この人だよ」
成る程。道理で聞いた事のある名前な訳だ。
蒲団に包まっているところを見ると，異能名も何となく予測できる。
『田山花袋………そして“蒲団”なぁ』
昔から読書家の香紅夜に触発されて本を読んでいた。
勉強は苦手だったが本だけは良く読んでいて，お陰で沢山の知識を身につけた。
「何と云うか……人虎に輪をかけて望み薄そうな方ですね」
「樋口さん失礼ですよ」
そう云ったものの，蓮華も少し同感してしまったのはここだけの秘密だ。
第145話「田山花袋と黒髪の撫子」→←第143話「Addict」
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星木雪野(プロフ) - 北見梨衣さん» コメントありがとうございます！気に入って下さって何よりです！ご心配をお掛けしますがこれからも宜しくお願いします！ (2020年3月26日 0時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
北見梨衣(プロフ) - 体調大丈夫ですか？いつも楽しく読んでます！更新できる時にして無理しないでください。待ってます！ (2020年3月25日 23時) (レス) id: 9b1e229f39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2020年1月11日 0時
