第49話「身体の一部が無い青年」 ページ4
“片脚が無い”
その問いに襟巻の青年はぴたりと固まった。
「脚だけじゃなく片腕も無いですよね」
「………何でそう思った？」
「……押し倒した時に何となく」
青年の雰囲気がピリピリしたものに変わった。
触れられたく無い処だったのか、思わず背筋に悪寒が走った。
「流石だな！お前の云う通り、俺には右腕と左脚が無い。今は義足を付けている」
青年は突然明るい声色で云った。
彼がズボンの裾を捲ると確かに左脚に義足が嵌めてあった。
「義手は？」
「必要無い」
「そうですか‥」
きっぱりと返されたので思わず溜息を吐く。
掴み所のない処は、何処か太宰に似ている気がした。
「で，どうだ」
「何が」
「お前の異能だよ」
襟巻から真紅の瞳が覗いた。
矢張りあの時云っていた力は異能の事だったのだろう。
「……すぐ貧血になるのが欠点ですが，まぁ悪くないですね」
「そりゃ良かった」
青年は口元に笑みを浮かべた。
素性も判らない、見るからに怪しい男なのに、何故気を許してしまうのだろう。
「お前は昔から高い戦闘能力と剣の才能があった。
その力が誰かを救う力になると，俺は信じている」
青年は蓮華の頭を優しく撫でた。
まるで子供の成長を願う父親のように。
「決して己の本能に呑まれるな」
その瞬間思いっ切り風が吹いた。
少し目を晒した瞬間にもう青年の姿は無かった。
緩やかな風が彼女の頬を撫でる。
“決して己の本能に呑まれるな”
「判っとるわ。そんなん………」
青い空を見上げながら蓮華は呟いた。
＊＊＊
探偵社に戻ると、扉の前に大きな荷物を持った敦が居た。
「蓮華ちゃん……」
「…どうしたのです？そんな荷物を持って」
その問いに敦は答えなかった。
だが蓮華は何となく察し、悲しそうに笑った。
「……出て行かれるのですね」
「……蓮華ちゃんにも怪我させちゃったし、もう誰も傷つけたく無いんだ」
“誰も傷付けたくない”
引き留める言葉はかけなかった。
今の彼の気持ちは痛い程判るから。おそらく何を云っても届かない。
「……じゃあ、行くね」
「……お元気で」
敦は蓮華の横を通り過ぎて行った。
その後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
＊＊＊
花柳蓮華
能力名「
(異能名は蜂飼耳さんの詩集『紅水晶』から)
(本人様とは全く関係はありません)
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» コメントありがとうございます！乱歩さんですか………組合編の辺りに出せたら良いなと考えております！期待に添えられるよう頑張りますのでよろしくお願いします！ (2019年9月15日 21時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - あ、主人公ちゃん乱歩さんの血を吸ってほしい…乱歩さんの＿＿ぐへへ〜!!!!(＾p＾三＾p＾) (2019年9月15日 13時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます！関西弁になる所は個人的にとても気に入っています！これからもよろしくお願いします！ (2019年8月14日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - これからも頑張ってください、応援してます！！ (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 初めまして…！文スト好きで、良く小説を漁っているんですがはっきり言ってこの小説めっちゃすこです。特に夢主ちゃんの関西弁がすっっっごく可愛くて！！！個人的に関西弁好きなんですが、いつもは敬語なのに時折見せる関西弁が性癖にぶっ刺さりました…。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2019年8月3日 1時
