第64話「優しいヒト、冷たい指」 ページ21
チョーカーの上の辺りに付けられた小さな傷。
それは蓮華が無理矢理付けた噛み跡だった。
幸い血は止まっていたが，強い罪悪感に駆られ，思わずそっと傷に触れた。
「ッ………どうした？」
「………痛かったよな。いきなり血を吸われてびっくりしたよな」
冷たい指が傷をそっと撫でる。
中也は姫抱きにした蓮華の顔を覗き込むと，不安定に揺れる桜色の瞳と目が合った。
「………中也さん、私は」
「謝らなくて良い」
彼は言葉を遮るように言い放った。
戸惑って彼をジッと見つめていると，自分を捕らえようとした時とは全く違う声で云った。
「怪我も大した事ねェし，それに………手前のそれは生きる為の行為だろ」
中也は再び蓮華を抱え直すと，部下と思われる黒服の男が車椅子を用意していたのでそこに降ろした。
そして彼女の白い手足に手錠と足枷を付ける。
ついでに暖かい膝掛けを掛けてくれた。
「捕虜にそこまでする？」
「俺が気になっただけだ。今のお前何時も以上に体温低いし顔色悪いからな」
確かに今着ているのは病院で着るような患者服なので正直寒い。
恐れられているマフィアとはいえ，彼は本当に優しい人だ。
「………今は自分の心配をした方が良い」
「！………そう，ですね」
確かに彼の言う通りだ。
彼が此処に居るという事は，此処はマフィアの拠点なのだろう。ならば足枷を付けられていた事にも納得が行く。
しかも，今から自分をわざわざ捕らえよと命じた張本人に会えるのだ。
『只者じゃないと思うけど………ガツンと文句は云ってやりたい』
エレベーターからヨコハマの街を見渡しながら，蓮華は拳を強く握る。
やがて最上階まで上がりきったらしく，車椅子を中也に押される形でエレベーターを出た。
「……行くぞ」
中に進むと黒服の男が二人居て，中也に対して一礼した。
『それなりの地位はあるんやろうな。異能も持ってるっぽいし』
その様子を眺めながら蓮華は思考する。
重厚な扉の前に二人が立った。
「首領，中原です」
中から返事は無い。
不審に思った中也はもう一度，少し大きめの声で呼んだが返事は無かった。
その代わりに別の声が聞こえて来た。
「リンタロウあの子はまだなの！？」
「も，もう少しで来るよエリスちゃん。それよりこの前買ったドレスを着てみてくれないかい！？」
「嫌よ！前買った服と似てるじゃない！」
蓮華はただこの会話に絶句していた。
第65話「吸血鬼と中年と幼女」→←第63話「吸血鬼の目覚め」
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» コメントありがとうございます！乱歩さんですか………組合編の辺りに出せたら良いなと考えております！期待に添えられるよう頑張りますのでよろしくお願いします！ (2019年9月15日 21時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - あ、主人公ちゃん乱歩さんの血を吸ってほしい…乱歩さんの＿＿ぐへへ〜!!!!(＾p＾三＾p＾) (2019年9月15日 13時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます！関西弁になる所は個人的にとても気に入っています！これからもよろしくお願いします！ (2019年8月14日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - これからも頑張ってください、応援してます！！ (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 初めまして…！文スト好きで、良く小説を漁っているんですがはっきり言ってこの小説めっちゃすこです。特に夢主ちゃんの関西弁がすっっっごく可愛くて！！！個人的に関西弁好きなんですが、いつもは敬語なのに時折見せる関西弁が性癖にぶっ刺さりました…。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2019年8月3日 1時
