第63話「吸血鬼の目覚め」 ページ20
無機質な機械の音だけが響く部屋の寝台に，吸血鬼の少女が横たわっていた。
その上に散らばる赤髪はシーツの白さ故に良く映えていた。
「………ん」
少女の瞼が震え，桜色の瞳がそっと開く。
最初に目にした白い天井から，ゆっくり辺りを見渡した。
『薬の匂い………病室か？』
ふと右腕を見ると腕には点滴の針が刺されており，それは輸血用の血液パックに繋がっていた。
其処でやっと自身の状況を察した。
「そうや……あの時私は撃たれて，そして………」
自己嫌悪に左手で顔を覆う。
吸血衝動に狩られて人を襲う事は，彼女が最も禁忌としていた事であり，最も恐れていた事でもあった。
たとえ相手が敵であっても，彼女にとっては許されない行為である。
『………痛くなかったかな，傷口とか深くないかな』
おそらく今は自分の心配をすべきなのだろう。
正直腹部は痛いし，喉が渇いて仕方がない。しかも右の足首に足枷が嵌めてあり逃げられない。
しかし彼女の頭の中には，あの時勢い余って襲ってしまった彼の心配しかなかった。
「もし会えたら，ちゃんと謝ろう………色々と」
そう決心した瞬間，病室の扉が開いた。
思考の所為で気が付かなかった為思わず身構えると，其処には先程謝ろうと決心したその人が居た。
「中也さん…？」
「……蓮華ッ！」
彼の青い瞳が大きく見開かれたと思ったら，すぐさま駆け寄って来た。
「目ェ覚めたのか？具合は？」
「………正直身体がめっちゃ怠いけど，大丈夫やと思ます」
「……そうか」
良かった，と安堵の表情を浮かべる中也をジッと見つめる。
心配してくれたという事がひしひしと伝わって来た為，何とも言えない気持ちになってくる。
しかし，悪い気はしない。
「蓮華。いきなりで悪いが今から首領の処に行くぞ」
「え？今から？」
「そうだ。悪いが大人しく付いて来て貰う」
怪我が治るまで待てないのかとも思ったが，蓮華としては自分を捕らえよと命じたマフィアの首領に興味があったので，大人しく従う事にした。
そもそも撃たれて血が急激に減ったこの状況で抵抗は無意味に等しいだろう。
「起き上がれそうか？」
「あー………正直しんどいかも」
「判った，ちょっと我慢しろよ」
「何を………ッて，うわ」
足枷を外した蓮華の身体を中也は軽々と持ち上げた。
その時彼の首筋にある小さな傷が目に入り，心の中に罪悪感と自己嫌悪の念が浮かんだ。
第64話「優しいヒト、冷たい指」→←第62話「真紅の化け物は涙を流す」
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» コメントありがとうございます！乱歩さんですか………組合編の辺りに出せたら良いなと考えております！期待に添えられるよう頑張りますのでよろしくお願いします！ (2019年9月15日 21時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - あ、主人公ちゃん乱歩さんの血を吸ってほしい…乱歩さんの＿＿ぐへへ〜!!!!(＾p＾三＾p＾) (2019年9月15日 13時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます！関西弁になる所は個人的にとても気に入っています！これからもよろしくお願いします！ (2019年8月14日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - これからも頑張ってください、応援してます！！ (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 初めまして…！文スト好きで、良く小説を漁っているんですがはっきり言ってこの小説めっちゃすこです。特に夢主ちゃんの関西弁がすっっっごく可愛くて！！！個人的に関西弁好きなんですが、いつもは敬語なのに時折見せる関西弁が性癖にぶっ刺さりました…。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2019年8月3日 1時
