第58話「闇の中での再会」 ページ14
夜になってもこの街は賑やかだ。
蓮華はふとそう思った。
だがすぐに当初の目的を思い出して，再び早足で歩く。
「何処行ったんやろ……」
彼女が探しているのは同居している太宰。
実質ふらっと居なくなる事は良くあった。しかし今回は妙な胸騒ぎがした。
その為夜の街を捜索する事にしたのだ。
『こうも人が多いと血の匂いも辿れへんなぁ……』
携帯が繋がらなかったので，
だが人が多過ぎると，他人の匂いが邪魔をして捜索しにくいのだ。
「………人が少ない処やったらマシかな」
繁華街の中心を離れ，港の近くまで進む。
予想通り其処は人が少なく、弱い風が吹いていた。
「………うーん」
いくら意識を集中しても彼の血の匂いは感じられなかった。
距離が離れすぎていると，流石に匂いを追う事は出来ない。
ふと，彼の血を思い出して喉が渇く。
『嗚呼，もっかい飲みたい』
今まで飲んだ中でも彼の血は特別だ。
誰よりも魅惑的な，甘い蜜。
あれを全て飲み干して仕舞えば，一体どうなって仕舞うのだろう。
考えただけでも背筋がゾクゾクした。
「ッて！何を考えてんの私は！」
余りにも化け物じみた考えに我に返った。
少し息が荒く，心成しか顔が熱い。
おそらく真っ赤になっているであろう頬や瞳を両手で覆った。
「何百面相してんだよ」
背後から聞き覚えのある声。
振り向くと，いつか見た夕焼け色の髪に黒帽子を被った青年が壁を背にして立っていた。
「………乙女に声をかける際に百面相はないやろ」
「武装した男共に素手で倒す奴は乙女じゃねぇだろ」
「………強い女性は嫌いですか？」
「まさか。とても魅力的だ」
控えめに尋ねた問いに彼は楽しそうに答えた。
素直に嬉しかったので，蓮華も優しく微笑み返す。
「お久しぶりですね。えっと，中原さん」
「中也で良い。堅苦しいしな」
「判りました，中也さん」
そう云うと，中也は満足そうに目を細めた。
自身とは対照的な蒼い瞳がきらりと輝く。
「中也さんはどうして此処に？」
「ちょっと野暮用でな。手前を探してたんだ」
「それってナンパですか？」
「手前なぁ………」
前に会った時のように揶揄う様子に中也は溜息を吐いた。
呆れ顔の彼に蓮華は再び笑った。
「少しなら良いですよ」
「…そうか，じゃあ場所を変えようぜ」
「判りました」
二つの影が闇に溶ける。
誰も彼等を見たものは居なかった。
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» コメントありがとうございます！乱歩さんですか………組合編の辺りに出せたら良いなと考えております！期待に添えられるよう頑張りますのでよろしくお願いします！ (2019年9月15日 21時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - あ、主人公ちゃん乱歩さんの血を吸ってほしい…乱歩さんの＿＿ぐへへ〜!!!!(＾p＾三＾p＾) (2019年9月15日 13時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます！関西弁になる所は個人的にとても気に入っています！これからもよろしくお願いします！ (2019年8月14日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - これからも頑張ってください、応援してます！！ (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 初めまして…！文スト好きで、良く小説を漁っているんですがはっきり言ってこの小説めっちゃすこです。特に夢主ちゃんの関西弁がすっっっごく可愛くて！！！個人的に関西弁好きなんですが、いつもは敬語なのに時折見せる関西弁が性癖にぶっ刺さりました…。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2019年8月3日 1時
