第57話「運命は巡る」 ページ13
「というか貴方なら聞かなくても判ったのではなくて？」
「当然だよ！何故なら僕は名探偵だからね！」
あっはっはと楽しそうに笑う乱歩に蓮華は苦笑した。
正直，彼には“26歳児”という言葉がしっくり来る。
「でもさぁ…君，まだ隠してる事あるよね」
鋭い眼差しに蓮華は言葉を失う。
『………はぐらかしても，この偉大な御仁には通用せぇへんか』
翠と紅の視線が交差した。
蓮華は小さく溜息を吐くと，困ったように微笑んだ。
「………そうですね」
「ふぅん、はぐらかさないんだ」
「此処ではぐらかしても無意味ですから」
「賢明な判断だね」
自分を吸血鬼だと見抜いた彼を欺くなんて無謀な行為だ。
それに，いつか話さなければならない事でもある。
自分が何処から来たのか，どう過ごしてきたのかを。
「安心しなよ，それをネタに何かするつもり無いし。
吸血鬼とか，そんな事考えずにこれからも探偵社で楽しく働きなよ」
「………はい」
蓮華は顔を綻ばせて頷いた。
“此処に居ても良いよ”と云って貰えたようで嬉しかったのだ。
『やっぱり，彼も正義の人なんやな』
穏やかで，気取った感じのしない甘い匂い。
優しい血の匂いに蓮華はクスリと笑った。
「あ，僕の血は簡単にはあげないからね！」
「それは残念です」
＊＊＊
日も暮れて，世界が闇に包まれた頃。
ヨコハマの中でも一際高いビルの最上階に，中原中也は訪れていた。
「血液に猛毒を宿す異能ですか」
「そうだ。君にはその異能者の捕縛を頼みたい」
中也の目の前にいる男，森鴎外が云った。
人虎を捕縛する際に見つけた異能者。
その異能は血液に猛毒を宿し，凡ゆるものを破壊する。その気になれば人命さえも奪うことが出来る。
極めて強力で危険な異能力だ。
「承知しました」
「ありがとう。これがその異能者の資料だよ」
渡された資料に目を通した中也は息を呑んだ。
忘れる筈もない，美しい赤髪と桜色の瞳。
写真には一人の少女が映っていた。
『何で手前が居るんだよ……ッ！』
今でも思い出せる，あの可憐な姿に中也はぐっと拳を握り締めた。
そして踵を返そうとした時だった。
「そうだ中也君，一つ聞いても良いかい」
「？何でしょう」
一瞬の沈黙が流れる。
森は少し考えてから静かに云った。
「……君はこの世に吸血鬼が存在すると思うかい？」
その問いの意味を，中也は後に知る事となる。
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星木雪野(プロフ) - さくさくサックさん» コメントありがとうございます！乱歩さんですか………組合編の辺りに出せたら良いなと考えております！期待に添えられるよう頑張りますのでよろしくお願いします！ (2019年9月15日 21時) (
レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
さくさくサック(プロフ) - あ、主人公ちゃん乱歩さんの血を吸ってほしい…乱歩さんの＿＿ぐへへ〜!!!!(＾p＾三＾p＾) (2019年9月15日 13時) (レス) id: f14b80ed49 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます！関西弁になる所は個人的にとても気に入っています！これからもよろしくお願いします！ (2019年8月14日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - これからも頑張ってください、応援してます！！ (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 初めまして…！文スト好きで、良く小説を漁っているんですがはっきり言ってこの小説めっちゃすこです。特に夢主ちゃんの関西弁がすっっっごく可愛くて！！！個人的に関西弁好きなんですが、いつもは敬語なのに時折見せる関西弁が性癖にぶっ刺さりました…。 (2019年8月14日 19時) (レス) id: b1b20001d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星木雪野 x他1人 | 作成日時：2019年8月3日 1時
