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第42話「紅色の異能力」 ページ44

轟く悲鳴に蓮華は目を覚ました。
すぐに起き上がると其処は元いた路地裏だった。



『………今のは、夢?』



だがそんな事を考える暇は無かった。
目の前には脚を食い千切られた敦が居たからだ。



「敦!」



重い身体を起こして駆け寄ろうとすると、黒い刃が蓮華の喉元に突きつけられた。
芥川の無機質な瞳が此方を向いた。



「次は貴様だが…何か云い残す事はあるか」



既に血の匂いで充満しつつある状況に思わず生唾を呑んだ。
貧血状態でもないのに喉が渇く。牙がガチガチと鳴る。
尋常じゃない彼女の様子を感じたのか、芥川は僅かに顔を歪めた。



「弱者に生きる価値は無い。一瞬でその首を落としてやろう」



弱者、か。
彼等に憧れていた反面、弱者と見下していた“人間”。
実質自分は負け知らずだったし、やろうと思えば殺す事だって出来た。
そして今自分はその“人間”に打ちのめされ,殺されかけている。



「……阿呆らしくて笑えてくるわ」



井の中の蛙とはこの事か。
先刻はあの男にああ云ったが本当に彼の云う通りだ。



「……遺言はそれだけか」

「遺言?まさか」



蓮華は目の前にある刃を素手で掴んだ。
鮮血がほとばしり、ぼたぼたと地面を赤く染める。




「確かに私は弱者です。
ですが私は此処で貴方に殺される訳にはいきません」



蓮華は刃を掴んだままゆっくりと立ち上がった。
先刻まで重く感じていた身体が何故か軽かった。
紅い瞳が爛々と輝き、髪が一層紅く染め上がった。
それは彼女の意志と強さを示していた。



「禍狗如きが“吸血鬼”の怒りを買った事、後悔しろ!」



そう叫んだ瞬間、吸血鬼は禍狗に飛び掛かった。
そして噛み千切る勢いで彼の首に噛み付いてやった。



「!!『羅生門』!」



突然の奇襲に反応が遅れた芥川は、すぐさま羅生門で蓮華を攻撃した。
彼女が立っていた所に黒獣が襲う。しかし、



「________“爆ぜろ”」



血色の良い唇が言葉を紡ぐ。
すると彼女の身体と地面が紅い光で包まれた。
正確には、彼女自身の血そのものが光っていたのだ。



「!!」



瞬間、黒獣が爆発した。
然も彼女の血が付いた部分だけが、所構わず破壊され、全てを溶かして行く。



「…貴様、異能者か!!」



自身の血が生き物のように蠢き、立派な刀に変わる。
蓮華は迷いも無くその刀の柄を握り構えた。



__________今こそ立ち上がれ



その血、万物を破壊し、全てを毒に犯す。
これが彼女の新たな力である。

第43話「踊り狂いし吸血姫」→←第41話「その者、天使か、悪魔か」



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設定タグ:文スト , 原作沿い , 吸血鬼   
作品ジャンル:アニメ
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時

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