第38話「黒き禍狗」 ページ40
いつのまにか辺りには雪のような物が舞っていた。樋口が谷崎に向かって銃を乱射するも、その姿は雪の如く溶け、やがて消えた。
「ボクの『細雪』は___
“雪の降る空間そのものをスクリーンに変える”」
何処からか谷崎の声がする。
だが彼の姿は何処にもなく、ただ雪が舞うだけだった。
「しかし………姿は見えずとも弾は中る筈っ!」
樋口は全方向に銃を乱射する。
だが彼女の首に手を伸ばす者が一人。
「大外れ」
「___ッ!?」
「死んで終え___!」
背後から現れた谷崎が樋口の首を絞め上げる。
その光景にただ立ち尽くしていると、何処からか誰かの咳が聞こえた。
その瞬間、感じたことの無い寒気がした。
「谷崎さん避けて!!」
言葉も虚しく、谷崎は崩れ落ちる。
彼の背中には黒い刃が刺さっていた。
「死を惧れよ、殺しを惧れよ」
そこに居たのは、何もかもが黒い男。
国木田が見せた写真の人物だった。
「死をのぞむ者、等しく死に、望まるるが故に___」
色濃く漂う血の匂い。
おそらく何人もの人をその手で殺したのだろう。
そういう者______人を殺した事がある者は,普通の人間よりも血の匂いが濃くなるのだ。
「お初にお目にかかる。僕は芥川。
そこな小娘と同じく、卑しきポートマフィアの狗」
此奴が“芥川龍之介”。
姿も気配も闇に包まれたその男は,異常な気配を纏っていた。
「芥川先輩、ご自愛を___此処は私ひとりでも」
瞬間、芥川が樋口の頬を叩いた。
路地にその音が響き、色眼鏡が飛ばされる。
「人虎は生け捕りとの命の筈、片端から撃ち殺してどうする。
役立たずめ」
「___済みません」
人虎?生け捕り?
気付けば蓮華はふと思い付いた事を口にしていた。
「まさか貴方達の狙いは………」
「然り。元より僕の目的は貴様一人なのだ人虎」
彼は倒れる谷崎達を一瞥して云う。
「そこに転がるお仲間は、いわば貴様の巻添え。
そしてそこの娘も直ぐにそうなる」
「僕のせいで皆が___?」
「然り。それが貴様の業だ人虎」
芥川の無機質な声が頭に響く。
「貴様は生きているだけで周囲の人間を損なうのだ」
敦の脳裏に孤児院での記憶が蘇る。
そして蓮華の脳裏に浮かぶのも元の世界での記憶だった。
『ただ生きている、それだけで………』
蓮華は思わず拳に力を入れる。
牙が音を立て、喉の渇きを感じた。
第39話「彼女の生きる意味とは」→←第37話「後悔しても遅い」
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時