吸血姫は桜の木の下に舞う

第31話「誰とお揃い？」 ページ33

「蓮華ちゃん達、遅いですね」

「先刻見たら着せ替え人形にされてたからねえ」



買い出しを終えた敦は扉の方に目を向ける。
入社試験の後、驚く程の身体能力で逃亡した彼女は暫くして戻って来た。
しかも入社する事も承諾して。



『太宰さんが連れ戻して来てたけど………何があったんだろう』



あの時他者と関わる気は無いとはっきり云っていた。
不思議に思った敦が扉の方を見ていると、二つの影が映った。



「皆様お待たせしました！」



そう云って入って来たのは入社試験で人質役だった黒髪の少女と、その後ろで俯いている赤髪の少女。



「見て下さい！素敵でしょう？」

「ちょッ、あまり押さんといて……」



照れ臭そうに云った彼女の服装はもう黒のワンピースと白の襟巻ではなく、
白いブラウスに黒いベスト、胸元には彼女の瞳の色に似た桜色のループタイが付けられていて、
下は膝が見える程の赤いプリーツスカート，黒いタイツにココア色のショートブーツを履いている。
そしてシンプルな白いベレー帽を被っていた。



「あの…やっぱり変じゃないですか？」

「そンな事ないよ！凄く似合ってる」

「身なりを整えるのは大事だからな」

「とても可愛らしいですわ！」

「それはどうも………」



皆の賞賛に蓮華の頬が緩む。
そして敦の隣に座ると、ふと彼女の手元に目がいった。



「蓮華ちゃん、それ…」

「気付きましたか。敦さんのを見て格好良かったから買っちゃいました」



彼女の手には敦と同じ黒の手袋がはめられていた。
蓮華はニコニコと笑って“お揃いですねえ”と云った。



「あ…もしかして嫌でしたか？」

「う、ううん！そんな事ないよ！」

「なら良かった」



敦が顔を思い切り横に振って否定すると、彼女は安堵の表情を浮かべた。
その様子を太宰が不貞腐れた様にじっと見つめる。



「私とのお揃いは拒否する癖に、敦君とのお揃いは良いのかい？」

「わざわざ脅して来たくせに良く云う」

「君に似合うと思って選んだのに」

「はいはいありがとうございます」



太宰への塩対応に敦は思わず苦笑した。
だが後に彼女がループタイを見て微笑んでいる様子を目撃して、“それなりに気に入ってるんだな”と察した。



＊＊＊



蓮華の服装は、敦と太宰と国木田の服装を組み合わせてもう少し女性らしくした感じです。
ベレー帽は作者が蓮華のイメ画を描いた時に似合うと思ったので(笑)
☆星木雪野☆

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