吸血姫は桜の木の下に舞う

第25話「吸血鬼は揶揄い癖があるらしい」 ページ27

「550円です、ありがとうございました！」



近くで買った物を持って戻ると、少女はベンチに座って足をぶらぶらさせていた。



「ほら、買ってきたぞ」

「だから別に良えって云うたのに………」

「先刻盛大に腹鳴らしてたくせによく云う」



中也がそう云うと少女は恥ずかしそうに俯いた。
そして遠慮がちにそれを受け取る。



「………何故たこ焼き？」

「手前関西圏出身だろ」

「何で知って……嗚呼、方言出てましたか」



隣で買ってやったたこ焼きを食べ始める少女。
一口食べると美味しかったのか目を輝かせて頬が緩んでいた。



『………って俺何初めて会った女に餌付けしてんだよ！』



彼女の腹の音に何となく放っておけず、思わず食べ物を奢ってしまった。
助けて貰った礼だと押し切り、挙げ句の果てには彼女の馴染み深いものを買い与えてしまった。
自分はマフィアなのに何とも言えない。



「ねえ」

「ンだよ………むぐッ」



突然口元にたこ焼きを押し込まれた。
思わずむせそうになったが何とか咀嚼する。



「美味しいでしょう？」

「………そうだな」



悪戯っ子のような無垢な笑顔にまた心を掻き乱される。
何故かたこ焼きではなく顔も熱い気がした。



『ン？ちょっと待て』



先程自分が口を付けたのは彼女が使っていた爪楊枝だった。
つまりどういう事かというと……



「間接キスですね」

「ッ！？？」



その声に振り向くと少女は桜色の瞳を此方に向けていた。
真っ赤になっている中也に対し、蓮華はニヤついた笑みを浮かべていた。



「真逆わざと………ッ！」

「別に揶揄おうとした訳じゃないですよ？
私もあげた後に気付きましたから」



だが最終的に彼女は耐え切られなかったように吹き出した。



「にしても貴方、見た目によらず判り易すぎちゃうん？流石の私も予想外やった」

「手ッ前……！」



目に涙を浮かべて爆笑する彼女に中也は声を荒げる。
そして照れた顔を隠すように帽子を深く被り直す。



「……ッたく、大人を揶揄ってンじゃねえよ」

「すみません。私も良い加減に人を揶揄う癖を直さなくては」



桜色の瞳が紅く色付いた。
その色は何処か悲しげで中也は言葉に詰まった。
紅色の瞳には黒い闇が混ざっている気がした。



＊＊＊



10,000hit超えたああああやったああああああ！！
本当にありがとうございます！
これからもよろしくお願いします！
☆星木雪野☆

第26話「気に入っちまったからなぁ」→←第24話「帽子屋は紅の娘が気になる」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す