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第1話「人生万事塞翁が虎」 ページ3

目覚めた時、眼前の光景に目を疑った。
橙色に染まった夕焼け、目の前に流れる川の音、そして川辺で倒れていた自分。



「此処は一体………第一、私は刺されて……」



ゆらゆらと立ち上がると刺されたところに傷は無く、身体にも異常は無い。



『………喉乾いた………』



前言撤回、思いっきり貧血だった。
貧血といっても人間のものとは訳が違う。
彼女の場合、命に関わることだ。
何故なら彼女は吸血鬼だからだ。



『早く………どうにかしないと………』



此処で立ち尽くしていても拉致があかないと思い、下流に沿って歩き出す。



「あら………」



10分程歩いた先に人影を見つけた。
気になって走り寄って行くとその人影は白い髪の少年で、先程の自分と同じように倒れているらしい。



「……あの、大丈夫ですか……?」



声をかけてもくぐもった唸り声が聞こえるのみ。
少し心配になったので今度は肩を揺すってみる。



「……えっと、本当に大丈夫?」

「………腹減って死ぬ………」



如何やら彼は空腹らしい。
何か無いかと懐を探ると、ポケットに小粒のチョコレートが入っていた。



「チョコレートならありますけど…要りますか?」

「えっ、良いの?」

「何も無いよりマシでしょう?」



はい、といって差し出すと,やはり空腹には勝てなかった少年は口の中にそれを放り込む。
彼が食べている間,少女はまじまじと彼を観察する。
髪は夕焼けに染まるほど真っ白で,瞳は紫と黄が混ざった朝焼け色だ。



『微かに土の匂いがするけど………良い匂い…』



そこまで考えると咄嗟に口を手で覆った。
吸血鬼は鼻が良い。特に空腹時はそれが顕著になる。
何故なら美味しい血を見極める為だ。
流石に此処で彼の血を吸うのはマズイ。



「……ご馳走さま。…えーっと」

「花柳蓮華と申します。貴方は?」

「僕は中島敦。チョコレート、ありがとう」

「!…いいえ、どういたしまして」



“中島敦”
昭和生まれの文豪の名前だ。
読書家だった“彼の人”の好きな作家の一人であり、触発されて『山月記』という作品を読んだ事がある。
此れは唯の偶然か、否か。



「………えっと、花柳さん?」

「“蓮華”で結構ですよ」

「じゃあ、僕も“敦”で」

「判りました、敦さん」



やめよう,ただの偶然かもしれないし。
本人に聞くのも失礼な気がしたので、彼女は何も追求しなかった。

第2話「川から足がなんとやら」→←設定



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設定タグ:文スト , 原作沿い , 吸血鬼   
作品ジャンル:アニメ
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時

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