第45話「その手は暖かかった」 ページ47
敵に狙われる事を承知で吸血鬼という事を明かしたのだ。
だから、それなりの覚悟はあるつもりだ。
「探偵社には孰れまた伺います。
その時素直に七十億と吸血鬼を渡すなら善し。渡さぬなら____」
「戦争かい?探偵社と?良いねぇ元気で」
芥川の言葉に、太宰は不敵な笑みを浮かべた。
「やってみ給えよ、________やれるものなら」
「零細探偵社ごときが!我らはこの町の暗部そのもの!
傘下の団体企業は数十を数え、この町の政治・経済悉くに根を張る!たかだか十数人の探偵社ごとき、三日とまたずに事務所ごと灰と消える!
我らに逆らって生き残った者などいないのだぞ!」
「知ってるよ、その位」
「然り。外の誰よりも貴方はそれを悉知している」
次の言葉は、蓮華にとって予想を遥かに超えたものだった。
「_____元マフィアの太宰さん」
その瞬間,蓮華は思わず太宰を見上げた。
予想は的中してしまったのだ。
「それでは失礼する」
芥川は樋口を連れて去って行った。
静寂に包まれる中,太宰がおもむろに此方を向いた。
紅色と鳶色の視線が交わった。
「…血、飲む?」
「では少しだけ」
太宰は腕の包帯を解き,此方に差し出す。
白くて硬い腕に唇を寄せ,優しく噛み付く。
『やっぱり……凄く甘い』
今朝とは違い,大切に味わいながら吸う。
芥川や樋口もそれなりの上物だったが,矢張り彼は別格だった。
「失望したかい?……私が元マフィアだって知って」
ふと上から声が聞こえた。
上を向くと,何処か憂いを帯びた表情の彼が居た。
まるで泣き出しそうな子供のように見えて目が離せなかった。
「……そんなん私やって吸血鬼やろ。同じようなモンやん」
太宰の瞳が見開かれた。
止血して包帯を巻き直すと、蓮華はその手を自分の頬に当てた。
じんわりと体温が伝わってきて暖かかった。
「それでも私を救ってくれたのは紛れもない事実。
だから怖れませんし,否定もしません………うわッ」
次の瞬間,蓮華は太宰の腕の中だった。
突然の事に理解が追いつかなかったが、背中に回された彼の腕は僅かに震えていた。
「ありがとう」
微かな声でそう聞こえた。
離された時には既に元の太宰に戻っていた。
「さて戻ろうか。早く与謝野先生に診せないと」
「私ナオミさん運びます」
「でも毒の血どうするの?」
「気合いで抑え込みます」
「流石蓮華ちゃん」
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星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!気に入って貰えて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年7月31日 21時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
赤砂晋助(プロフ) - この話好きやけんこれからも頑張ってください! (2019年7月22日 9時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - 三輪さん» 実はそうなんです!バリバリの関西弁ではないのですが、気に入って貰えて何よりです!これからもよろしくお願いします! (2019年6月24日 15時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
三輪 - 吸血鬼ネタ最高です……!蓮華ちゃんが可愛い。。それとつかぬ事をお伺いしますが、作者さまは関西圏出身なのですか?方言が刺さります! (2019年6月24日 15時) (レス) id: e6d66e6ea7 (このIDを非表示/違反報告)
星木雪野(プロフ) - ありがとうございます!!私も吸血鬼ネタが大好きで作りました!これからもよろしくお願いします! (2019年6月2日 23時) (レス) id: 9c0b08827d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星木雪野 x他1人 | 作成日時:2019年6月2日 17時