その11 ページ22
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「ざけんなド腐れ女ァァァァ!!!」
思わず過去に浸ってしまった私はそう叫ぶと共に、さっきの樹木に思いっきり八つ当たりをする。
「遺言が『ケーキ食べたらブッ殺す』よ、そんな母親いるかァ!?いるんだよ、私はその女の股から生まれてきたんだよ!!!」
今考えても腹立つ話だわ、つかあのガチクズ呪術師共ぜってェ許さねェからな!!後山本、お前も今口元抑えて堪えてんの見えてるからなゴラァ!!!
「家族を顧みないとか、そういう次元じゃないのよあの人は!!
見えないの、凄いスピードで生きてたから!!速すぎて私の眼にはなんの残像も残ってないわよ!!」
…葬式の時も、涙なんて出てこなかった。涙を出すには思い出が足りなかったから。
――出てくるのは不満とか怒りとか、汚い感情ばっか。
母親が死んだのにそんな感情に侵されてる自分が嫌で、どうしてもそれを外に吐き出したかった。
「…だから、出したの。
……そうしたら、思いの外スッキリしちゃって。
まるで汚い感情が吸い取られた様だった。
それから、嫌な事がある度にやるようになって……
――そうポツリポツリと語れば、山本は真面目な表情に戻って静かに話を聞いてくれる。
「…化け物にはわかんないだろうけどさァ、弱い人間にゃそういうものが必要なのよ、」
"あいつが憎い"
"あいつを消したい"
「妬みだ
そう言いながら山本の包帯を思いっきり引っ張って距離を詰めれば、奴は吃驚した様な声を漏らす。
「…アンタが居なくなったら、私また呪い屋やるわよ」
私はガッと彼の胸ぐらを掴んでそう宣言した。
「止めたいなら教えてよ。
吐き気がする様な汚い事を考えてる自分を抑える方法…そういう自分に飲み込まれない方法を」
…そんなものはないのはわかっている。
でも、もしかしたら私より長く生きているこの化け物なら、なんて期待を未だに寄せている自分がいた。
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作者名:勇者の人 | 作成日時:2021年2月27日 10時