背景、大人になった私たちへ【妖怪ウォッチ】 (ページ2)

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第一話ページ2

時の流れというのは残酷なものだ。

楽しかった夏はあっという間に過ぎ去り、成長してしまう。

馬鹿みたいに走り回っていた元気はなくり。

昔、触れた虫は今や見るのもダメになり。

毎日遊んでいた友達とは連絡を取らなくなり。

輝いていた日々が、今やなんの感情の起伏もなくただただ一日が終わってしまう。

夏瀬梢は、現在22歳。OL。

少し、鬱気味。

疲れていた。

小学校から憧れていた、仕事は思った以上のギャップがあった。

定時退社はない。

サービス残業は当たり前。

おつぼねに目をつけられ、小言を言われる。

上司にはセクハラとパワハラの毎日。

『.....ご飯。いいか。寝よ』

最近は、ベッドに横たわりすぐ寝て夕食も疎かにする日が続いている。

酷く、疲れていた。

久しぶりの休日。

何もする気が起きなかった。

『.....少し甘いものでも食べようかしら』

ムクっと起き上がり、商店街まで目指す。

日差しが眩しく、しんどい。

昔の自分は炎天下の中でも元気に走り回っていたのだからその元気さに感心する。

やっと、商店街に着く。

目の前には「元祖」・「本家」のおまんじゅう。

『.....』

そういえば、父と母は元祖と本家で全く意見が分かれていたことを覚えている。

個人的にはどっちでもよかったのだが。

『...どっちにしようかしら』

迷っていると、誰かが声をかけてきた。

「レディ、迷ってんなら本家にしねぇか?」

イケメン。

長髪の今どき若い男という感じの。

ナンパかとも身構えたが、スッピン、目にクマ、ダル着の自分にナンパすることもないと思い、少し警戒しながらも話す。

『....じゃあ、本家を買います...』

そう言い、本家まんじゅうを買う。

「お、いい判断だと思うぜ」

笑う姿も、イケメン。

あまりこういうチャラそう.....顔が良い男性とは今の状態で離したくはない。

ササッと会話を終わらせようと、頭を下げて去ろうとすると、「なぁ」と呼び止められる。

「なんか...どっかであったとこ」

『ないです。では...』

やはり、新手のナンパ師だと確信した。

こんな状態の自分にナンパするなんて、相当女が引っかからないのだろうと少し哀れんだ。

話をぶった切って、その場を後にする。

家に帰って、寝転びながらまんじゅうを食べる。

『....甘すぎる』

昔は大好きだったおまんじゅうも、大人になり食べるとあまり好きじゃなくなっていた。