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牢に入れられてから、甲斐丸は時を数え続けた。
太陽が真上に登る時間も、そうして暮れに差し掛かる時間までも、正確に。
戸惑い、心細さに涙を零し続ける女性達に、安易な言葉はかけようとしなかった。 ただ時たま様子を伺うのみ。
一度話した女性は何度か声をかけようとしていたが、甲斐丸の集中した澄んだ双眸を見ると、どうしてかその気持ちは収縮した。
(戌も半刻過ぎたか…… そろそろ日が暮れた頃だろう)
細い手を精一杯にまとめて、縄抜けを試みた時。 牢屋へと続く階段を降りてくる音が聞こえて、甲斐丸はピタリと静止した。
ビクリ、と他の女性達の肩が震える。
男の話し声が段々と近くなってくる。 二人だ。 二つの声が聞こえる、と甲斐丸は思った。
「ハッハッハッハ！ まさかこれ程までに上手くいくとは思わなんだから」
「殿のお力の賜物ですよ」
「いやあ、それは当然なんだが、お主の活躍も中々のものよ。 正直言って予想以上だ」
「お褒めに預かり光栄に存じます」
そうして、再び下卑た笑い声が聞こえてくる。
(殿……？)
殿が来るのか、と甲斐丸は思いながら、どうするべきかと悩んだ。
この城の殿様だというならば、少しくらいは人相を確かめておくべきだとは思うが、既に会話を聞いただけで基本的な悪役の香りしかしない。 それならば別に姿形も関係なくなる。 これから。
そうしてその笑い声はとうとう、甲斐丸たちのいる牢の前まで来た。 ひっ、と女性達が喉から引きつった声を出したのが分かった。
「ここだな」
「はい」
甲斐丸は少しゲンナリとしながら、伏せていた顔を上げた。 やけに恭しく着飾った趣味の悪い小男が見えた。 予想通りだと思いながら、隣へと視線を滑らせる。
はっと、息を呑んだ。 そうして、不自然なくらいに勢いよく顔を俯かせた。
「……ン？ そこの女、」
前髪で顔が見えないよう、めいいっぱい下を向く。 殿と呼ばれる男が、暗闇を一生懸命覗くように様々な角度から甲斐丸の姿を覗き込んでいた。
すると、忽ちガマガエルのようにぐちゃりと笑った。
「一瞬しか見えなかったが…… お前は一等美しいな、気に入った。 おい、湯浴みをさせろ！」
甲斐丸は心臓をバクバクとさせながら、必死に顔を上げないよう務めていた。
「はい」と隣の男が返事をしたかと思うと、視線だけで牢屋番の男に合図をし、男はやる気のなさそうだったあの様子とは打って変わって、慌てたように飛んできた。
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星月夜(プロフ) - 空桜さん» コメントありがとうございます！！ドキドキしていただけてとっても光栄です！ 嬉しいです〜！ これからも頑張って書いていくのでよろしくお願いします〜！ (2020年2月2日 10時) (
レス) id: a4d6640b48 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - 四年生との絡みが一番好きです(*´-`) これからの展開が読めなくて毎回ドキドキしながら読ませてもらってます (2020年2月1日 20時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星月夜 | 作成日時：2019年10月22日 13時
