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カキン、とあっさり攻撃は弾かれるが、甲斐丸は迷うことなく何度も苦無を振るった。 その度に、質の良い金属同士のぶつかる音が響く。
どんどん激しさを増す甲斐丸の猛攻ぶりに、男は炎を目の端に映すその表情を垣間見た。 虚ろな、瞳をしていた。 それであるのに、纏う雰囲気は鬼のそれだった。
不思議だと男は思った。 とても不可解だと男は思った。 だが自分は遠いいつか、まるで───……
「！、っ……！！」
刹那。
男の動きが一瞬動揺のせいで鈍ったのを、甲斐丸は見逃さなかったのだ。
苦無の先に力をめいいっぱいに集中させ、歯を食いしばったのと同時に男の苦無を弾き飛ばす。 宙を舞った苦無を見、甲斐丸は内心心臓が落ち着くのを感じた。
だが間違いだった。 今度は甲斐丸がその安心感につけ込まれ、男の足蹴によって苦無を遠くへ飛ばされたのだ。
はっとした。 ほんの少しでも気を緩めるべきではなかったのだ。
甲斐丸は眉間にシワを寄せると、懐に手を入れて簪を取り出して構えたが、それより一足早く男が自身の鳥の子を取り出し地面に打ちつけた。 それによって、甲斐丸の視界は煙で包まれることとなった。
甲斐丸は素早く手で口を覆うと、簪を男の気配のする方角へ勢いよく投げてから後方へと飛び上がったのだった。 そこでゆっくりと息を整える。
一方、煙の動きから自身の方へと何かが投げられたと察知した男は、寸ででその物の正体に気が付き片手でそれを受け止めた。 が、手のひらに痛みが走る。
それも当然。 守一郎お手製、鋼で作られた簪は、形は歪で何より先が嫌に尖っていた。 これでは髪飾りというよりも、暗器の類いとして作られたと言われた方が十分頷けるだろう(守一郎が留三郎のどこを参考にしたかといえば、恐らく"こういうところ"だ)。
それを一瞬のうちに判別できず、素手で受け止めた男の手のひらからは血が流れ出た。 その事に男は顔を歪めながらも、離れの屋根の上へと軽々飛んだのだった。
「…………」
居心地の悪い空気の中、再び二人の視線が交わる。 煙がゆらりと風に揺蕩い、空気に溶けてゆく様子が、やけに侘しいと感じられた。
そんな中、男が口を開く。
「ああ…… そうか」
息を、ゆっくり吐き出すような言葉だった。 甲斐丸は、静かな視線で男を見据えて、次の言葉を待った。
「そうか、そうなのか……」
「…………」
「忍びに、なったのか……」
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星月夜(プロフ) - 空桜さん» コメントありがとうございます！！ドキドキしていただけてとっても光栄です！ 嬉しいです〜！ これからも頑張って書いていくのでよろしくお願いします〜！ (2020年2月2日 10時) (
レス) id: a4d6640b48 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - 四年生との絡みが一番好きです(*´-`) これからの展開が読めなくて毎回ドキドキしながら読ませてもらってます (2020年2月1日 20時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星月夜 | 作成日時：2019年10月22日 13時
