【RKRN】白い夜 (ページ9)

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「あっ！六年い組の白谷甲斐丸先輩！こんにちは～！」
「はいこんにちは」

甲斐丸が長屋から少し離れた弓道場へ向かっている途中、丁度図書室の裏側辺りできょろきょろと周りを見回しながら駆ける一年は組生物委員の夢前三治郎と遭遇した。
甲斐丸の姿を瞳に収めるなり駆け寄って挨拶をしてくれたので、甲斐丸も比較的柔らかに挨拶を返す。
そしてから屈むと、「委員会か」とどこかわかり切っているような口調で尋ねた。

「そおなんですよ～！また三年い組伊賀崎孫兵先輩のペット達が脱走しちゃって…… 今日は竹谷先輩もご不在なので大変なんです」

三治郎は悲愴な面持ちでそう言った。それは大変だな、と甲斐丸は頭の中で「ジュンコ～！」と叫びながら林の中を捜索する孫兵の姿を思い浮かべる。

「ちなみに何がいなくなったのだ」
「えっと、毒蛇のジュンコと、大ムカデの三四郎、あと毒蜘蛛のマリーが……」
「危険生物ばかりではないか」

甲斐丸の言葉に、あはは、そうなんです、と三治郎は苦笑いをした。そんな中で五年ろ組生物委員会委員長代理、竹谷八左ヱ門の不在は確かに痛手だ。生物委員会は人数こそ多くも一年生ばかりの委員会であるし、と甲斐丸は思考を巡らす。
そうしてから、ふむ、と頷いた。

「わたしも辺りを注意深く見てみることにするか」
「ほんとうですか！？」

甲斐丸の言葉に三治郎は双眸をきらきらと輝かせた。ああ、と甲斐丸は返事をする。

「見つけられるかは分からないが、万が一見かけたら声をかけよう」
「ありがとうございます！じゃあぼく、行きますね」
「気をつけるんだぞ」

はい！と三治郎はいい返事をして、たたっと校庭を駆けて行った。
その姿に手を振り、三治郎が長屋の角に消えていったのを認めた瞬間。甲斐丸はすっとそのかんばせから表情を消し去って、瞬きをする程の短い間にその姿を空気に溶け込ませた。

甲斐丸と別れてからおよそ半刻後。ペット達が見つからずにぐずぐずとべそをかく孫兵を、三治郎はしっかりしてください、と宥めながら裏山の茂みをかき分けていた。

( ……急がないと、日が暮れちゃう。先生方にも先輩にも迷惑かけたくないなあ )

三治郎はペット達の名前を呼びながら、そんなことを考える。と、その時。

「ジュンコ！！」
「えっ！」

孫兵が一際歓喜に満ちた声をあげたので、三治郎はそちらへと視線を移した。するとなんと、今の今まで探していたとジュンコが孫兵の元へと自ら帰ってきているではないか。