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「最近学園はどうだ」

艶やかな米を口いっぱいに頬ぼりながら、雅之助は唐突にそう言った。
「特にどうということも」甲斐丸は鯵の塩焼きを嚥下すると、平坦な口調で答える。

「だが去年よりもあまり帰ってこなくなったじゃないか、忙しくなったんだろう?」
「六年生ですから」
「まあそれもそうだが」

甲斐丸の言葉に、雅之助は何処か不満そうに眉を寄せる。 なので甲斐丸は付け加えるように、「学級委員長にもなりましたし」と告げた。

「学園長もお人の悪い……」

少し腹立たしげに言ってから、雅之助はぐっと湯呑に注がれた茶を一気に飲み干した。
「いつものことでしょう」甲斐丸は無感情そうに小さく返す。 はあ、と雅之助は湯呑を起きながら大きくため息を吐いた。

「あんまり時間がないと、就職先を決めるのも大変だろう。 きちんと城は回れているのか?」
「問題ありません」

「そうか」と雅之助は頑なに自分の方を見ない甲斐丸の方を見つめ、眉からふわっと力を抜いたような表情をした。

(就職の話をすると、こいつはいつも具体的なことを話そうとしない)

一体どう問題がないのか、甲斐丸は一度として語ったことはない。 だが別に、話したくないのならばそれでいいと雅之助は思っている。 僅かな寂しさを感じなくもないが。
まあともかく、と雅之助は一度話を区切る。

「見たところこの前の手と腕のように派手な怪我もないようだし、俺はお前が大丈夫そうで安心した」

至極ほっとした口調で彼はそう言う。 本心からの言葉である。
その声に、甲斐丸はようやく目線を雅之助の方へと投げると、腕と掌に巻かれた包帯を見てぎょっとしていた雅之助を思い出した。
怪我をして帰ってくると、いつもああなのだから。 と甲斐丸は心の中で呟く。
そうして、ほんの僅かに纏う雰囲気を和やかにさせると、口を開いた。

「……なんですか、父親のようなことを言って」

その言葉に、雅之助は照れたようにぎこちなく笑う。

(父親、か……)

その近いようで遠い響きが、ただ単に嬉しかったのだ。
雅之助はその嬉しさに、なんと返答しようかしばらくの間迷った。
すると、ああ、と甲斐丸が思い出したかのような声を上げた。 雅之助は咄嗟に「どうした」と問う。

「話は少し戻りますが、六年生はこの時期に女装試験があるのです。 なので特にどうということもないというわけでもありませんでした」
「だーっ! ややこしいな!」

淡々と告げられたその文章のややこしさに、雅之助はそう叫んだ。

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作者名:星月夜 | 作成日時:2019年2月3日 19時

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